ブランディングが9割 ⑱
・ある特定の分野で1位を目指す
1位を目指してほしいと言われても、「そりゃ大手だからできること」と
思うかもしれません。しかし、そんな簡単にあきらめてはいけません。
差別化について説明したように、差別化されたある特定の分野や領域で
1位になればよいのです。
「自動車といえばトヨタ」という話をしましたが、もっと細分化することで、
各社の特徴が浮かび上がってきます。
例えば、「エンジンが優れた自動車といえばホンダ」「デザインが優れた
自動車といえばマツダ」「軽自動車といえばスズキ」というように、
自動車の特徴を細分化することで、各社ナンバーワンの分野が出てきます。
自動車メーカーそれぞれが、自分たちの特徴を出そうと非常に努力して
いるのです。
自動車メーカーで、さらに細分化して差別化に成功しているブランドも
あります。
独特なデザインと完全受注生産で成功している、光岡自動車です。
中には、既に発売は終了しているものの1000万円を超える「オロチ」という
スーパーカーもあったほどです。
大手がいるところは無理と思われがちですが、市場を細分化することで
1位を獲得することが可能になるのです。
・なぜそこまで1位にこだわるべきなのか?
人は少ない金額の支払いだったとしても、買い物に失敗したくないのでは
ないでしょうか。失敗しないためにどうしているかというと、世の中で
売れていて、多くの人が買っている商品を選ぶのです。
みんなが使っているから「間違いないだろう」「失敗しないだろう」と
判断する方が多いようです。
それゆえに、多くの企業やブランドは、何かしらの1位になろうと必死に
なっているのです。「何かしらの」というのがポイントです。
できない理由を探すのではなく、お客さんが望み、自社ブランドが1位に
なれる領域をぜひ探してみてください。
✔ お客さんの頭の中に競合との差別化を築く「ポジショニング」
ここまで、「お客さんに求められ、そこで独自の領域をつくり、競合との
違いを出していくことの重要性」をお伝えしてきました。
また、「ブランドはお客さんの頭の中で築かれる」ということも、繰り
返し説明しました。
自社ブランドがたとえ競合と違った良さを持っていたとしても、それが
お客さんの頭の中で理解されていなければ意味がありません。
いかに自社のユニークな価値をお客さんの頭の中に位置づけていくかが
重要になってきます。これをポジショニングと呼びます。
言い換えれば、ポジショニングとは、お客さんの頭の中に、独自性のある
差別化されたイメージを植えつけていくことを言います。
接するメディアが多い現代では、お客さんの頭の中はたくさんの情報が
溢れかえり、常に情報の洪水が起こっているでしょう。
また、人は基本的に面倒くさがりです。流れてくる多くの情報から、なか
なか新しいブランドについての情報を覚えようとはしてくれないでしょう。
したがって、ポジショニングは、お客さんの頭の中にないものに新しい
何かをつくり出すのではなく、「既にお客さんの頭にあるイメージを
操作して、それを商品に結びつけること」がポイントになってきます。
・刷り込まれたイメージを覆すのは簡単ではない
PBにとっては、「いかに自社のPB商品の品質が良いというイメージを
お客さんの頭の中に植えつけるか」が課題でした。
そんな中、PB商品の品質の良さをわかりやすく消費者に伝えることで
成功したブランドがあります。西友のPB「みなさまのお墨付き」です。
品質を訴求するブランドということを打ち出すべく「みなさまのお墨付き」を
立ち上げたそうです。
「みなさまのお墨付き」は、読んで字のごとく、「みなさま=消費者」の
「お墨付き=実際に試食したり試したりして良いと認めた」ブランドと
いうことになります。西友では、みなさまのお墨付きを発売するにあたり、
全商品消費者テストを行い、お客さんの70%(2019年10月以降80%)が支持した
商品のみを発売しました。パッケージデザインを変えただけなのに売上が
1.5倍に伸びた商品もあったそうです。
いかにお客さんに対して上手に伝えることが重要か、これでわかるでしょう。
「PBの品質の良さ」を伝えることによって、それまでの「PBは低価格で
気品質は良くない」というポジションから、「気軽に使えて、品質が良い
ことがわかりやすい」というポジションを取ることに成功したのです。
つまり、ブランドにおいて、実際に品質が優れていることよりも(もちろん
品質が優れていることは重要なのですが)、お客さんが「品質が良い」と
頭の中で認識してくれると(これを「知覚品質」と呼びます)が大切なのです。
この続きは、次回に。