「D・カーネギー 人を動かす」⑧
PART3 ✳️ 人を説得する十二原則
1. 議論を避ける
● 「議論に勝つ最善の方法は、この世にただ一つしかないという結論に
達した。その方法とは、—-議論を避けることだった。
毒蛇や地震を避けるように議論を避けるのだ。
議論は、ほとんど例外なく、双方に、自説をますます正しいと確信させて
終わるのだ。議論に勝つことは不可能だ。もし負ければ負けたのだし、
たとえ勝ったとしても、やはり負けているのだ。なぜかと言えば—
仮に相手を徹底的にやっつけたとして、その結果はどうなる?—–
やっつけたほうは大いに気をよくするだろうが、やっつけられたほうは
劣等感を持ち、自尊心を傷つけられ、憤慨するだろう。
—–「議論に負けても、その人の意見は変わらない」—–
● ベンジャミン・フランクリンはよくこう言っていた—
「議論したり反撥したりしているうちには、相手に勝つようなことも
あるだろう。しかし、むなしい勝利だ—-相手の好意は絶対に勝ち得られ
ないのだから」
● 「ここに ウィリアム・ジェー とこしえに 眠る —-
正しきが上にも正しき道を歩みて 眠る—-
正しからざる道を歩みし者と同じく 眠る」
正しきが上にも正しき議論をいくらしたところで、相手の心は変えら
れない。その点、正しからざる議論をするのと、何ら違いはない。
● 釈尊いわく—-
「憎しみは、憎しみをもってしては永久に消えない。愛をもってして
はじめて消える」
誤解は、議論をもってしては永久に解けない。気転、外交性、いたわり、
そして、相手の立場で同情的に考える思いやりをもってして、はじめて
とける。
● 『片々録』と題した本に、意見の不一致から口論が生じないようにする
方法が書いてある。
・〝意見の不一致を歓迎せよ〟—-「二人の人間がいて、いつも意見が
一致するなら、そのうちの一人はいなくてもいい人間だ」という
言葉を銘記すべきだ。思い及ばなかった点を指摘してくれる人が
いたら感謝しなければならない。この指摘は、重大な失敗をあら
かじめ防ぐきっかけを作っているのだ。
・〝最初に頭をもたげる自己防衛本能に押し流されてはならない〟—–
不快な状況に直面した時、まず現れてくるのは、自分の立場を守ろうと
する本能だ。気をつけなければならない。冷静に構え、最初の反応を
警戒する必要がある。あなたの最悪の人柄が突出し、最善の人柄が
隠れてしまうかもしれないのだ。
・〝腹を立ててはいけない〟—何に腹を立てるか、それで人間の大きさが
決まってくる。
・〝まず相手の言葉に耳を傾けよ〟—相手に意見を述べさせ、最後まで
聞く。逆らったり、自己弁護したり、争論したりすれば、相手との
障壁は高まるばかりだ。相互理解の橋を架ける努力こそ大切で、誤解の
障壁をかさ上げするなど愚の骨頂である。
・〝意見が一致する点を探せ〟—-相手の主張を聞いたら、まず賛成
できる点を話す。
・〝素直であれ〟—-自分が間違っていると思う点を探し、素直にそれを
認めて謝る。それで、相手の武装がとけ、防衛の姿勢がゆるむ。
・〝相手の意見をよく考えてみる約束をし、その約束を実効せよ〟—-
相手のほうが正しいかもしれない。自分の言い分を通すのに急なあまり、
あとになって「あの時言ったのに、こちらの言うことを聞こうとしな
かったではないか」などと言われるはめになるより、はじめに相手の
主張をよく考えてみる約束をしたほうが、はるかに事は簡単だ。
・〝相手が反対するのは関心があるからで、大いに感謝すべきだ〟—-
わざわざ時間をかけて反対意見を述べてくれるのは、あなたと同じ
事柄に関心を持っている証拠だ。相手はあなたの手助けをしたいと
願っているのだと考えよ。そうすれば、論敵は味方になる。
・〝早まった行動を避け、双方がじっくり考え直す時間を置け〟—-
たとえば、のちほどもう一度話し合って、問題点を総ざらえして
みようと提案せよ。この話し合いのために、次のような質問を
自分に向けてみることだ。
相手のほうが正しいのではないか?
少なくとも正しい部分もあるのではないか?
相手の主張に正当性、長所はないか?
私の反論は問題の解決に役立つのか、それともただ溜飲を下げる
だけのものか?
私の反論は相手を遠ざけることになるか、それとも引き寄せる
ことになるか?
私の反論は善意の人々から評価が得られるか?
私は勝てるか、それとも負けるか?
勝てるとしてその代償に何を失うか?
私が反論しなかったら、この論争は収まるか?
この難関はむしろ好機ではないのか?
【人を説得する原則①】
議論に勝つ唯一の方法として
議論を避ける。
この続きは、次回に。