お問い合せ

リテールマーケティング  ⑱

③  ゴールデンラインを意識した陳列

 

小売業の店内において、人の五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)を

意識することは重要である。

五感のうち、売場の商品を認知(視認)するうえで重要な要素は「見る=

視線」である。視線を意識した売場づくりを行うことによって、顧客は

ストレスが少なく、買物を楽しめて、結果として買上点数の増加が期待

できる。

 

1. ゴールデンラインは顧客で異なる

 

人は、何かを探しながら歩く回るとき、通常は水平方向というよりも、

やや下方(10度下〜30度下)に視線を移している。

これは、安全に歩き回るためである。

このような自然な視線の範囲を自然視野と呼ぶ。

この自然視野に相当する高さ(範囲)が顧客にとって最も見やすい位置と

なる。このような位置をゴールデンライン(ゴールデンゾーン)と呼ぶ。

つまり、ゴールデンラインは、目線をやや下げた腰から胸くらいの高さで

あり、一般的な身長の日本人女性の場合、手に取りやすい床上70〜120cmの

位置を指すことが多い。

 

図3-1 自然視野とゴールデンライン

 

 —省略—-

 

□ 【日本人女性の平均身長】

 

日本人女性の平均身長は、文部科学省「学校保健統計調査」によると

2015年時点で157.9cmです。 この157.9cmというのは17歳の平均身長で、

2015年の年齢別身長は以下のようになっています。 ちなみに過去5年間、

17歳時点の平均身長は158.0cm前後と大きな変化はありません。2020/07/03

 

ゴールデンラインに季節商品や流行商品などの売れ筋商品を適切なフェイ

シングでディスプレイすれば、おのずと顧客の目に留まりやすくなる。

そして、それら商品を手に取る(触れる)頻度が高まり、顧客にとっての

購買機会は増える。しかし、ゴールデンラインに商品を無計画、かつ、

雑然と陳列すれば、顧客は買いたいと思う商品に目を留めることがむず

かしくなり、商品を手に取る(触れる)頻度が低下し、顧客にとっての購買

機会は減る。つまり、小売店にとっての販売機会は損失ということになる。

ゴールデンラインには新商品や売上上位の商品を意図的にディスプレイし、

顧客への訴求力を高めることが必要である。

そのゴールデンラインの設定基準は、顧客の性別や年齢などによって異なる。

たとえば、高齢者の場合は前かがみになるためゴールデンラインは低くなる。

また、子どものゴールデンラインは、次のように2つあることに注目すべき

である。

 

一、子どもの身長を考慮して低めに設定する場合

 

二、陳列棚の上部に設定する場合

 

子どもは、母親など大人と一緒に買物に来ることが多い。その際、大人の

顔を見ながら買物をするために視線が上部へ移るのである。

そこで、天井に装飾品を施すなど、子どもの視線を集めるような仕掛けを

して、子どもが興味を持って立ち止まるきっかけをつくることが必要である。

これらにより、店内の回遊性の向上と滞在時間の延長をはかり、買上点数の

増加につなげる必要がある。

 

図3-2 人によって異なるゴールデンライン

 

 —-省略—–

 

このように、小売業は常に自店の対象顧客を意識したゴールデンラインに

注目した売場づくりを心がけなければならない。なお、ゴールデンラインは

取扱商品や陳列棚の種類によっても微妙に上下する。

「顧客の手に触れやすい領域」を前提として、自店の特徴に合わせた陳列の

手法を工夫していくことが求められる。

 

2. ゴールデンラインにデイスプレイすべき商品とは

 

ゴールデンラインにディスプレイすべき商品としては、一般に新商品や

売上高の上位商品が有効である。そのほかにも、自店にしかない商品、

季節商品、購入頻度の高い商品などが該当する。

また、通常、人の目の動きは左上〜右上〜左下〜右下へと「Zの字」を

描くように動くことから、自店にとって特に重要度の高い商品をゴール

デンラインにZ字状に配置することで、購買につながる可能性が高まる。

ここで注意しなければならないのは、チラシ広告に掲載した日替わり商品

などの目玉商品である。

目玉商品は粗利益率が低いため、ゴールデンラインに陳列すると、従業員が

補充や前出しなどの作業に追われて、肝心な利益獲得に結びつかないという

事態になる。目玉商品を買いに来る顧客は、店内で多少時間がかかっても

目的の商品を探し求めるといった購買行動をとる。そのため、目玉商品の

ような粗利益率の低い商品をゴールデンラインに陳列しても、小売店に

おける効果は限定的といえる。

ゴールデンラインには、これから成長が期待できる商品を中心にディス

プレイするのが望ましい。

 

3. 顧客の視線を意識した接客が大切

 

接客において、販売員と顧客が目を合わせるのはデメリットとなる場合が

多い。なぜなら、顧客の多くは「自由に買物を楽しみたい」と思っている

ため、販売員と視線が合ってしまうと「何か買わされるのではないか」と

いう心理的な抵抗感を抱く。その結果、買物をやめて店舗から出て行って

しまうことがある。しかし、顧客の視線にはビジネスチャンスのヒントが

眠っている。販売員は、顧客が何を探しているのか、顧客の視線の先を

意識するようにしたい。

探している商品がゴールデンラインにディスプレイしてあれば、それだけ

視認率が高まる。また、顧客の視線を意識していれば、その人が欲しい

商品を先回りして紹介することもできる。視線を意識した接客は顧客満足を

高める手段になるのである。また、店内の照明を工夫することによって、

顧客の視線を誘導することができる。たとえば、店内を薄暗くし、自店が

売りたいと思う商品にスポットライトを当てることで、その商品が輝いて

見えるように演出する。それによって、顧客は思わず手を伸ばす確率が

高まる。

 

 

この続きは、次回に。

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