お問い合せ

リテールマーケティング  ⑲

④ ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)で購買意欲を喚起

 

1. 顧客の視覚に訴求することが重要な理由

 

近年、インターネットやスマートフォン、SNSの急速な普及により消費者の

行動は著しい変化を遂げている。

オムニチャネルという利便性の高い購買環境が構築されたことにより、

顧客は、いつでも、どこからでも商品を購入できるようになった。

このような状況において、実際の店舗(リアルショップ)に足を運んでもらう

ためには、店舗自体がこれまで以上に魅力的になり、顧客の購買意欲を

喚起する売場づくりを行うことが必要である。

すなわち、顧客にとって見やすく、選びやすく、買いやすい季節性や流行性に

富んだ快適な売場づくりを、色彩や照明、そして商品構成などの要素を

活用して総合的に演出し、視覚的に訴求していくビジュアルマーチャン

ダイジング(以下、VMDと略)の展開が求められている。

視覚に訴求することが重要な理由は、人間の五感(視覚、聴覚、嗅覚、

触覚、味覚)は視覚が優先され、80%以上もの外的情報を脳に送り、記憶

しているといわれているからである。

 

2. マーケティングの一環としてのVMD

 

日本ビジュアルマーチャンダイジング協会によれば、「ビジュアルマーチャン

ダイジングとは、文字どおりマーチャンダイジングの視覚化である。

それは企業の独自性を表し、他企業の差異化をもたらすために、流通の場で

商品をはじめすべての視覚化要素を演出し管理する活動である。

この活動の基礎になるものがマーチャンダイジングであり、それは企業

理念に基づいて決定される」と定義されている(1988年)。

このように、VMDはマーチャンダイジングの意図、政策、実施プログ

ラムを「商品、情報、環境」と整合させた視覚表現の仕組みと方法論と

いえ、マーケティングの一環として行われる企業戦略活動である。

小売業のマーケティングにおいては、購買促進策としてのインストア・

マーチャンダイジングの1つである。

「ビジュアルマネジメント」の手法に位置づけられる。

また、企業やブランドの世界観を店舗というメディアで表現し、企業の

独自性を高めるうえでVMDは重要であり、それはリアルショップだけ

ではなくネットショップ(バーチャルショップ)においても同様である。

 

3. 顧客の購買行動とVMD

 

(1) 「AIDMAの法則」の活用

 

買回品や専門品などの商品を購入する場合、顧客は「AIDMA(アイドマ)の

法則」にもとづくプロセスをたどるのが一般的といわれている。

AIDMAとは、顧客がある商品を知って、それを欲しいと思い、実際に

購買するまでの過程を5段階に分類した行動プロセスで、Attention(注目)、

Interest(興味)、Desire(欲望)、Memory(記憶)、Action(行動)の頭文字から

名付けられたものである。

 

A(注目)—-「あれ、何だろう。気になるな」

 

I(興味)—-「ほう、よさそうだな」

 

D(欲望)—「これ、欲しいな」

 

M(記憶)—「どうしよう、どれにしようか」

 

A(行動)—-「よし、これに決めた」

 

このように、顧客が店舗に入ってある売場で商品に気がつき、あれこれ

迷って買物をするという心理過程とVMDは密接な関係がある。

 

□【買回品】

 

商品はその購入頻度購入動機から、最寄品・買回品・専門品大別される。

このうち買回品は、購入頻度比較的低く、品質やデザイン・ブランド・

価格などを比較検討したうえで購入される商品をいう。

婦人服紳士服家具装身具などがこれに該当する。

 

(2) VMDの方法と展開場所

 

マーチャンダイジング全体や商品そのものを見やすく、選びやすく、しかも

魅力的に見せる表現方法として、ビジュアルプレゼンテーション(VP)、

ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション(PP)、アイテムプレゼン

テーション(IP)の3種類がある。

 

① ビジュアルプレゼンテーション(VP: Visual Presentation)

 

企業やブランド・ショップなどのコンセプトやイメージにもとづき、季節の

テーマなどに合わせて重点商品や流行商品などを視覚的に表現すること

(またはそのスペース)をいう。

顧客の注目度を高め、店頭から店内に顧客を誘導する重要な役割をもつ。

ショーウィンドウやメインステージ、フロアのテーマゾーン、売場の

マグネットポイントなどで展開される。

 

② ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション

  (PP: Point of Sales Presentation)

 

その売場の重点商品の持つ魅力や特徴、着こなし感、コーディネートなどを

視覚的に表現すること(またはそのスペース)をいう。

特定のテーマを持たせたそれぞれのコーナーの顔となる商品のプレゼン

テーションである。

テーブル什器の上、ゴンドラ什器の上部、壁面の上部、柱周りの上部などで

展開される。

 

③ アイテムプレゼンテーション(IP: Item Presentation)

 

アイテムとは品目のことで、アイテムプレゼテーションとは、特定の

アイテムをそのとき性やデザイン、色などで分類・整理し、顧客に

見えやすく、選びやすいように配置して陳列すること(またはそのような

陳列されたスペース)をいう。

ゴンドラ、ハンガーラック、ガラスケースなどの陳列什器で展開される。

 

表4-1 VMDの役割と表現方法

 

■ ビジュアルブレゼンテーション(VP)

 

目的: 新商品や実需期の商品(重点商品)を重点テーマにもとづき

    ビジュアルに表現。

 

表現方法: 売場で一番目立つ場所で展開。

       顧客の関心を捉えた商品を、関連商品との組み合わせや、

                  生活提案のある演出、POPによる情報提供でアピール。

 

展開場所: ショーウィンドウ(店全体)、ステージ(衣料)、テーブル(住関連)、

                 平台・トップエンド(食品)など。

 

■ ポイント・オブ・セールス・プレゼンテーション(PP)

 

目的: 新商品、CM放送商品、話題商品、店長おすすめ商品の価値をアピールと

          話題づくり         

 

表現方法: その商品を使った生活の便利さや楽しさ(価値)がよくわかる

                  演出。その商品の特徴を引き立てるPOPや展示・演出。

 

展開場所: エンドステージ(衣料)、エンドテーブル(住関連)、トップエンド

      あるいはエンド什器(食品)、柱周り、壁面など。

 

■ アイテムプレゼンテーション(IP)

 

目的: 顧客の比較購買の場、商品を見やすく、触りやすく、選びやすく

           陳列。

 

表現方法: 顧客ニーズに応える十分な品ぞろえ。

      他の商品との違いがよくわかるPOP・情報提供。

      商品の形状や顧客の体に合わせた選びやすく触りやすい

                什器と陳列。

 

展開場所: プロパー売場(定番)

 

 

この続きは、次回に。

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