リテールマーケティング ㉖
⑨ リージョナルプロモーションの実践
リージョナルプロモーションとは、一定地域(商圏)を拠点とする需要創造
活動を意味しており、店舗を拠点として販売諸活動を行う小売業ならではの
戦略(店舗起点の狭域型販売促進)といえる。
ここでは、リージョナルプロモーションの具体例を取り上げ、その意味を
深堀りする。
1. 夏季の4P戦略「夏も盛りの7〜8月)
顕在する需要に対応するのは、一時的な売上を確保するためのセリング
(販売促進)である。これに対して、潜在的な需要を刺激し、中長期的な
利益の追求を目指すのがマーケティングである。
小売業がマーケティングの一環であるリージョナルプロモーションを展開
するためには、次に示す“マーケティングの4Pミックス”を適用し、計画的に
その時々の購買需要を創出していく必要がある。
—-一部、省略—–
こうした状況をターゲット顧客に対して的確に認知させることが、小売業の
マーケティング戦略のセオリーである。
従来の季節定番(売れ筋ブランド)の安売りプロモーションから、季節の
美的生活シーンの提案へと方向転換することによって、収益性向上を目指す
ことが小売業における焦眉の課題である。
□ 【焦眉】しょうび
《眉を焦がすほど、火が身近に迫っている意から》危険が迫っていること。
差し迫った状況にあること。「焦眉の問題」
2. Product(商品=マーチャンダイジング)
(1) 品種と補完品種のクロスマーチャンダイジング
—-省略—-
(2) 推奨商品の厳選
上記のクロスマーチャンダイジングを行う際、品質面だけでなく、使用
効果が誰にもはっきりとわかるような独自の推奨商品をプロモーションの
キーアイテムに据える。
—-一部、省略—–
(3) クロスマーチャンダイジング
商品の陳列の組み合わせを考えながら、1品でも多くの商品を買って
もらおうとする販売促進手法の一つ。
顧客が一緒に購入しそうな商品を近くに陳列して関連購買を促す。
(4) 品目数の絞込み
クロスマーチャンダイジングにおける陳列の基本は、テーマに合わせて
品種を限定するとともに、品種ごとの品目数を少数に絞り込むことである。
ただし、品目ごとの陳列数量をできるだけ多く取り、前進立体陳列によって
ボリューム感を打ち出す。これによって鮮度のよさとお買い得感を強烈に
訴求することが重要である。
一般に、小売業はカテゴリー(品種)ごとの品目数を多くとる割には、品目
ごとの陳列数量(店頭在庫)が少なすぎる。したがって、顧客にとっては
お買い得感が乏しく、購買決定に至りにくい売場と映る。
特に、品種ごとの推奨アイテムには、必ず効能や使い方を記したPOP広告を
添付し、その季節商品の重要性を強調しなければならない。
3. Place(場所=プロモーションコーナー)
(1) 小売業の本質は側面販売
季節のプロモーションは、できるだけ顧客の目につきやすい場所で、しかも
レジに近い場所を選ぶことが重要である。レジに近い場所ということは、
側面販売する意味を含んでいる。
側面販売とは、季節のプロモーションコーナーに立ち寄る顧客の横から、
さり気なく季節の暮らし方などの対話を行い、必要な商品を推奨する方法で
ある。
—省略—–
図9-1 対面販売と側面販売の比較
対面販売—カウンターを挟んで販売員と顧客が対面。
側面販売—売場を背に販売員と顧客が商品を見ながら対話。
(2) 対話による粗利益率の改善
仮に、売場スタイルがセルフサービス販売方式だとしても、売り方の基本は
販売員による側面販売を志向すべきである。
販売員は、自ら季節のプロモーション商品を使用し、季節のプロモーション
コーナーに立つことを心がけるべきである。
顧客との対話において、「実は私も○○を使っていますが、朝起きたときの
スベスベ感は他の商品とまったく違いますね」といったコミュニケーションは、
接客時において顧客が購買決定するうえでの重要な決め手となる。
(3) 季節プロモーションコーナーの常設
売り場での安売りは、できるだけ避ける必要がある。
なぜなら、安売りは定番商品の価格をより高くイメージさせてしまうからで
ある。それがきっかけで顧客の購買意欲を減退させてしまうことも否めない。
したがって、季節のリージョナブルプロモーション展開は、顧客にとって
最も立ち寄りやすく、店内で最も見やすい場所を選定する必要がある。
つまり、定番コーナーよりも行きやすく、注目しやすく、選びやすい場所で
なければならない。マーケティング志向の小売業は、季節のリージョナル
プロモーションの年間売上高に占める割合のほうが、定番商品の年間売上高
よりも多い。このことに注目すべきである。
この続きは、次回に。