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リテールマーケティング  ㊿-2

⑥ サービスとホスピタリティ

 

1. 来店客数は多いのに売り上げが伸びない原因とは

 

顧客にとって、総合品ぞろえスーパー(スーパーストア)と専門店の違いは

何だろうか。根本的な違いは、買物をする時の顧客が受ける店の印象に

あるといえる。つまり、総合品ぞろえスーパー(スーパーストア)では、

店舗に入って自由に商品を見て、気に入った商品がなければそのまま店を

出ても何の支障もない。

しかし、専門店の場合は、そうすることがむずかしい。多くの顧客は、

店に入って「何を買わないと悪いから、何か買わなくては」という強迫

観念にとらわれてしまう。また、販売員が近くで顧客の様子をうかがって

いるので、ゆっくりと商品をみることができないという焦りもある。

そうした思いから、専門店には「ひやかし」で入ってみるという行動が

取りにくいのである。

専門店側も、一時、総合的ぞろえスーパー(スーパーストア)のような

「入りやすく、出やすい」店づくりに取り組んだこともあった。

しかし、総合品ぞろえスーパー(スーパーストア)の数千坪という売場面積に

対して、わずか数十坪程度の専門店においては、完全に「入りやすい、

出やすい」と思わせるような店づくりがむずかしいことは明らかである。

では、総合品ぞろえスーパー(スーパーストア)においても、「入りやすい、

出やすい」店づくりさえできれば顧客がどんどん来店して繁盛するのかと

いえば、決してそうではない。顧客はかなり入っていても、実際に売上増に

つながらないといった状況が見られる。

その原因の1つとして、サービスとホスピタリティの違いが挙げられる。

どんな店舗であっても、商売としてのサービスは行っている。

しかし、“もてなす”という意味でのホスピタリティを重視した経営を

行っている店舗は稀といってよいであろう。

小売業は、顧客が来店したのに「なぜ何も買わずに出て行ったのか」

を、ホスピタリティの視点から把握することが重要である。

 

2. サービスとホスピタリティの違い

そこで、次にサービスとホスピタリティの違いをみていく。

 

(1) サービスとは

 

今日の消費経済社会における生活を考えるとき、モノだけでは満足を得る

ことはできない。ライフスタイルを形成する要素には、サービスの部分が

多く含まれているからである。

たとえば、ビジネスパーソンが朝、自宅を出てから会社にたどり着くまで

には、電車やバス、カフェやファストフード店、クリーニング店、郵便

ポストなどを利用するシーンが考えられる。

これらはすべてサービスである。つまり、サービスとは、不特定多数の

購買者のために提供される便利で、規格化された機能といえる。

また、小売店で“サービスする”といえば、おまけや無料という意味で使わ

れる場合が多い。“サービスデー”といえば、奉仕とか安売りがイメージ

されるだろう。さらに、“サービス重視の店”とあれば、接客に優れたお店を

イメージする。

このように、「サービスとは商品を売買するときの対象」であり、コストの

かかる小売業経営の基本的な付帯機能である。

 

(2) ホスピタリティとは

 

ホスピタリティとは、顧客に「なんて親切なのだろう」と感動を与える

ことが基本の考え方であり、そのためにはマナーをきちんと守ることが

大切となる。

ホスピタリティは、「もてなす」という意味で使うのが適切である。

わかりやすくいえば、大切な人を自分の家に招く時の気持ちで顧客に

接することである。どんな顧客に対しても、家族や友人に対するときと

同じように、もてなす気持ちをもって接することが大切である。

したがって、過剰なサービスをするということではない。

ホテルやレストランの接客係のように、温かみのある言葉づかいや接客

態度で顧客を最高の気分にさせることが肝要である。

たとえば、高級レストランなどでは、顧客が食事をしているテーブルに

支配人や料理長がやってきて、「お味はいかがですか」「楽しんでいた

だいていますか」と気配りをする。これがホスピタリティであり、多くの

企業に不足している機能である。彼らは「もしお客様が自分たちの気遣いに

満足してくれなかったら、もう二度と来てはくれない」ことを熟知している。

だからこそ、サービスよりもホスピタリティのほうに誇りを持っている

のである。

 

 

この続きは、次回に。

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