お問い合せ

リテールマーケティング  ㊿-3

3. おもてなしの精神で顧客を迎える

 

ここでは、販売員の接客に関する改革を行うためのヒントを述べる。

顧客を重視する経営を行ううえでは、どんな顧客に対しても家族や親しい

友人と同様にホスピタリティ(おもてなし)の精神を持って臨むことが大切で

ある。仮に、大切な人を自宅に招くとしたら、多くの場合、どのような

おもてなしの心で準備をするだろうか。まず、庭から玄関、そして応接

する部屋やトイレの清掃から始まり、楽しいひと時を過ごすための会話の

テーマを考えることも準備の1つである。場合によっては、最寄駅までの

送り迎えや、迎える人の好みを調べて料理に工夫を凝らしたり、帰り際に

手渡すお土産なども準備したりしておく必要があるだろう。

こうしたホスピタリティは、何も個人宅だけで求められる行為ではない。

これを小売業がそのまま日常業務として行うことによって、顧客の満足度が

向上するのである。すなわち、家の内外を掃除することは、小売業にとって

店舗内外のクリーニング業務である。不要な物などを整理・整頓するのは

クリンリネスであり、古くなったポスターや販促物・什器などを取り

換えるのはメンテナンスである。

デイスプレイにも工夫を凝らし、身だしなみやエチケットを徹底すると

ともに、生活提案の情報提供を強化することも忘れてはならない。

そして、最も重要な接客には心地よいBGMを活用し、大切な人に接する

ときのように振る舞う。

帰り際には、再度の来店を促すためのお土産としての情報をさまざまな

形にして提供する。

これら一連の流れがまさにホスピタリティ経営である。

 

今日の消費経済社会における顧客は、欲求する商品を自ら選択できる力を

持ち合わせている。

たとえば、百貨店でいえば、顧客の最大のロイヤルティは過剰なサービス

からではなく、家族や親しい友人と接する時のようなホスピタリティから

生まれると考えている。売りつけようとする言葉と態度で顧客にアプローチ

したのでは、洗練された販売員とはいえない。

真心を込めて生涯のパートナーとなりうる顧客を受け入れるホスピタリティ

精神の養成を忘れてはならない。

 

表6-1 サービスとホスピタリティの比較

 

[サービス]

購買者の目的に対してその内容や質を保証するための行為。

[ホスピタリティ]

継続して来店してもらうための満足を保証する行為。

 

[サービス]

商品供給型の経営。

[ホスピタリティ]

顧客重視型の経営。

 

[サービス]

おまけ、無料という意味に使われる。

[ホスピタリティ]

もてなすという意味に使われる。

 

[サービス]

サービスデー、サービス品。

[ホスピタリティ]

心遣い、気配り。

 

[サービス]

小売業での目標。

[ホスピタリティ]

ホテル、レストランでの基本。

 

[サービス]

コストをかけて大衆(マス)向けのサービスプログラムを規格化する。

[ホスピタリティ]

コストがかからない個人(パーソナル)向けの顧客満足行為。

 

表6-2 ホスピタリティを店舗に活かす10箇条

 

[自宅でのもてなし]→[店舗でのもてなし]

 

● 玄関、トイレ、部屋などの掃除→① クリーニング

● 汚れ物や邪魔な物などを片付ける→② クリンリネス

● 座布団やクッションなどを取り換える→③ メンテナンス

● 花を添えたり、絵を飾ったりする→④ デイスプレイ

● 服装や身だしなみを整える→⑤ エチケット、マナー

● 好みを考えた料理やデザートを用意する→⑥ メニュー提案

● 話題づくりの企画を練る→⑦ 情報提供

● 話すときの言葉遣いを考える→⑧ 接客技術

● 気持ちをリラックスさせる演出を行う→⑨ BGM

● 手土産を渡して「また来てくださいね」という気持ちを伝える→⑩ お見送り

 

出所:表2-1と同じ

 

 

 

この続きは、次回に。

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