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リテールマーケティング  ㊿-7

③ 小売業の理論の基本用語

 

小売の輪の理論【提唱者:M.P.McNair(マクネア)】

 

小売業態は、低コストで底マージンの価格訴求型店舗形態と高コストで

高マージンの非価格訴求型店形態を繰り返すという理論である。

革新的小売業態の新店舗は、低価格戦略を武器に登場し、やがて高価格

戦略になり、その後、再び低価格戦略を武器とする店舗形態に戻るサイ

クルを繰り返す。

 

① 新しい革新的な小売業態は、一般的にはローコストオペーレーション・

  システムを革新することによって店舗運営コストを抑え、底マージン

     での値入を実現し、消費者に対して低価格を訴求する店舗として登場

     する。

 

② この革新的小売業態は、低価格を武器に短期間のうちに当該市場で

      優位的な地位を築き上げ、既存の店舗形態から消費者を奪っていく。

 

③ その成功をみた他の小売業も、先発の革新的小売業態を模倣し、追随

     していくことで、既存の店舗形態との競争に加えて、革新的小売業態

      間においても熾烈な価格競争が展開される。

 

④ このような価格競争が激化すると、さらにコストを抑えて低マージン・

      低価格を訴求していくことがむずかしくなり、消耗戦となっていく。

 

⑤ やがて、先発の革新的小売業態は競争者との差別化をはかるため、

      取扱商品の品質やサービスの向上、店舗施設のグレードアップなどに

      目を向けるようになり、非価格競争へと移行し、低価格訴求ではなく

      マージンアップをねらうようになる。

 

⑥ その結果、価格訴求型の革新的小売業態は、高コスト、高マージンの

      小売業態へとシフトし、新たに価格訴求を標榜する革新的小売業態の

      登場の余地を生み出すことになる。

 

こうしたプロセスがサイクル状に繰り返され、サイクルがひと回りする

つど、また新たに革新的小売業態が出現する。

 

図3-1 小売の輪の理論(イメージ)

 

 —図は省略—-

 

① 価格訴求型小売業態の参入(低コスト・低マージン)

 ↓

 ↓ 急成長

 ↓

 全盛

 ↓

② 差別化戦略の展開(グレードアップ)

 ↓ ・サービス訴求

 ↓ ・品質向上

 ↓    ・店舗の格上げ

 ↓ 

③ 業態の格上げ(トレーディングアップ)

  非価格訴求型小売業態へ移行(高コスト・高マージン)

 ↓

 衰退

 ↓

④ 新たな革新的小売業態の参入(低コスト・低マージン)

 ↓

 追随小売業態の参入

 

アコーディオン理論【提唱者:S.C.Hollander(ホランダー)】

 

商品構成の総合化と専門化の繰り返しという、品ぞろえ面に視点を

当てた理論である。商品ラインが広がったり、縮んだりすることから

楽器のアコーディオンになぞらえて命名された。

この理論で説明された現象は、アメリカにおける小売業態の変遷

みられる。

 

① アメリカでは南北戦争以前に、食料品から日用雑貨まで幅広く品ぞろえ

     する“よろず屋”(ゼネラルストア)が発達した。しかし、南北戦争後は

     商品ラインを絞り込んで奥行きの深い品ぞろえをする専門店が出現し、

     ゼネラルストアは衰退していった。

 

② その後は、幅広く奥行も深い総合的な品ぞろえをするデパートメント

     ストアが出現し、第二次世界大戦以降は専門化された品ぞろえ小売

     業の総合化も起こった。

 

③ さらに、その後は再び専門化の現象が起こり、ブティックのように

     専門化を深耕させた店舗形態も出現してきた。

 

しかし、今日では、「総合化と専門化の繰り返しではなく、総合化と

専門化が同時並行で進む分極化である」という考え方がある。

 

図3-2 アコーディオン理論(イメージ)

 

 —省略—-

 

□ 変遷(へんせん)

 

 (スル)時の流れとともに移り変わること。

 

□ 深耕(しんこう)

 

 (スル)田畑深く耕すこと。

 

 

 

この続きは、次回に。

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