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書籍「すごい物流戦略」アイリスオーヤマ ①

第3章 アイリスオーヤマの物流戦略

 

・「便利」「業界初」「値ごろ」な商品を、幅広く取り扱う成長企業

 

宮城県に本社を構えるアイリスオーヤマを知っているという人は多いと

思います。しかし「どんな会社なのか」と質問されると、どう答えていい

のか悩んでしまうのではないでしょうか。

生活用品の企画・製造・販売を幅広く手がける会社、主にホームセンターで

扱う園芸用品・生活用品・ベッド用品の会社、家電量販店でよく見かける

手ごろな価格で便利な機能を持った家電を製造している会社—-こうした

イメージが一般的と思いますが、実はLED照明では業界トップの大手企業に

肉薄するシェアを持っている会社でもあり、最近では東北地方のコメの

全国販売や海外への輸出をする事業にも乗り出しています。

ちなみに同社では、メーカー機能と問屋(ベンダー)機能を持った「業態

メーカーベンダー」として、自らを位置づけています。

2017年度のグループ売上高は4200億円。

2022年度には、家電事業、EC事業のさらなる成長を見込み、売上高1兆円を

目標に掲げています。

 

・トップ自らが物流の最新動向を熟知

 

・独自の事業形態は、大いなる挫折から生まれた

 

大山ブロー工業所が現在のアイリスオーヤマに成長していった第一歩は、

下請け企業からの脱却でした。

「大手企業の下請けでやっている限り、いくら仕事が増えても、自分たちの

儲けにはなかなかならない。自分たちの強みで勝負ができる自社製品の

開発にチャレンジしたい」

そうした強い思いで開発した製品が、プラスチック製の養殖用の浮き(ブイ)

です。

自社製品の第2弾はプラスチック製のプランター(育苗箱)です。

この2つの製品とも、当時としては画期的な商品で、イノベーションと

読んでもいいほどの大きなインパクトを業界に与えたに違いありません。

そして1973年、第1次石油ショックが日本経済を襲いました。

プラスチック製品の原料は石油ですから、原材料不足に対する先行き

不安からプラスチック製品の特需が発生、さらなる注文が舞い込み、

生産規模を拡大していきました。

ところが好事魔多しです。原油価格が落ち着きを取り戻すと、プラス

チック製品に対する特需がなくなるばかりか、勢いで生産していた製品が

一転供給過剰となり、問屋から返品の山となって戻ってきたのです。

好業績から一気に倒産の危機に瀕してしまったのです。

この危機を乗り越えるため、大山社長は苦渋の決断をしました。

創業の地、東大阪と、「一緒に晩御飯を食べる仲間」を涙ながらに切り

捨て、工場を設置していた宮城県に拠点を移すことにしたのです。

このときの苦い経験は、現在のアイリスオーヤマの事業形態にしっかりと

生かされています。問屋(卸)は、メーカーから消費市場へ商品を流す役割を

担う存在です。しかも、ただ単に「右から左へ」動かすだけでなく、市場の

需給調整機能も期待されています。メーカーとしては大量発注があれば、

絶好の商機ですから生産能力の限りを尽くして対応するのが自然な考え

方です。第1次石油ショック時に、問屋の需給調整機能が十分に働いて

いれば、大山ブロー工業所を見舞ったような悲劇は起こらなかったかも

しれません。

このことから、大山社長は市場において問屋機能を持つことの重要性を

学び、問屋機能を取り込んだメーカーとしての地歩を築いたのだと思い

ます。

 

・成長業態の変化に合わせて、自らも変化し続ける

 

アイリスオーヤマをさらなる成長軌道へと導いたのが、メーカーベンダー

機能の確立です。メーカーベンダーというのは、メーカー機能を持った卸と

いうような意味合いで使われることが多いですが、同社の場合は、もっと

戦略的な意味合いを持っています。これから成長していく業態に合わせて、

自分たちの製品づくりを行い、供給機能を果たすというものです。

当時のアイリスオーヤマは、多品種のプラスチック成型製品を作る技術を

持った独立メーカーでしたが、成長の糧として新たな販路開拓を必要と

していました。そんなとき大山社長が目を付けたのが、ホームセンター

チャネルでした。

「ホームセンターの品揃えに対応したベンダーがあれば、店舗は1社との

取引ですむ。自分たちで、その品揃えに合うような製品を作って供給

すればいい」

自分たちを成長業態に合わせた業態に変化させるという戦略は見事に

的中しました。ホームセンター業界の成長とともにアイリスオーヤマの

業績も順調に伸びていきます。その後も、ドラッグストアやEC(ネット

通販)という成長業態向けの商品開発を進めており、これからの成長が

楽しみです。

 

 

 

この続きは、次回に。

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