書籍「すごい物流戦略」オムニチャネルと物流戦略①
第6章 オムニチャネルと物流戦略
● 「EC注文=宅配便」はすでに過去の話
この20年ほどの間に買い物環境が大きく変わりました。
そのドライブエンジンとなったのは、20世紀末から21世紀初めにかけて
一大ブームとなった「インターネット革命」と、ここ数年で世界的な規模で
広がりつつある「IoT(モノのインターネット)革命」です。
インターネット革命は、インターネットの黎明期から孫正義氏(ソフト
バンググループ会長)が好んでよく使っていた言葉ですが、まさに革命
でした。その結果、EC(ネット通販)市場は16兆円を超える規模にまで
成長しています(B2C全体=物販系、サービス系、デジタル系の合計)。
今やインターネット上にさまざまな情報があふれている時代ですから、
いつどこにいても、移動中でも、家にいるときでも、あるいは仕事の
合間でも、最新の商品情報や価格をチェックでき、現在地から最寄りに
ある店舗、在庫の有無などもリアルタイムにわかります。
SNSを介して友人や信頼している人からの声、おすすめを聞くこともでき、
実際に買い物をするのは、リアル店舗だったり、スマホ経由のECだったり、
電話注文だったり、そのときの気分や場所、時間帯によって、使い分ける
人が増えています。また、パソコンから注文しリアル店舗や近所のコン
ビニに足を運んで商品を受け取ったりと、買い物の仕方も多様化しています。
以前であれば、「EC注文=宅配便」と決まっていましたから、ものすごい
変わりようと言えるでしょう。もちろん、現時点ではこうした消費者の
買い物行動の変化に対応できている小売業者もあれば、そうでないところも
あります。しかし消費行動の変化に対応できなければ、いつの時代でも、
小売業としてのビジネスが厳しくなるのは明らかです。
だからこそ、大手を中心として、「いつでも、どこでも、不便を感じる
ことなく買い物ができる環境づくり」に躍起になっているのです。
それがオムニチャネルへの対応です。
● 物流戦略が大きく関わる
オムニチャネルとは、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」に
よれば「消費者が複数のチャネルを縦横どのように経由してもスムーズに
情報を入手でき、購買へと至るための、販売事業者によるチャネル横断型の
戦略やその概念、および実現のための仕組み」だと示されています。
「オムニ(omni)」というのは「すべての、あらゆる」といった意味で、
私なりにオムニチャネルを簡単に整理すると、「どんな注文方法にも、
どんな受け取り方法にも対応する、お客様満足度の高い商売の仕組み」です。
この続きは、次回に。