Coffee Blake-令和3年6月30日(水)「早稲田会議」③
RoundtableA-2
イノベーション:日本企業の競争力再構築
INCJ会長CEO/志賀俊之、エイチ・アイ・エス会長兼社長CEO/澤田 秀雄、
東京海上ホールディングス会長/永野 毅、明電舎会長/浜崎 祐司、
MonotaRo社長/鈴木 雅哉、日本総合研究所理事長/翁 百合、
早稲田大学ビジネススクール教授/淺羽 茂
ルールブレイカーが変革の扉を開く
日本の各産業には小さなイノベーションがいくつも登場している。
それらは社会構造を変革させるムーブメントには発展しないもののニッチな
分野でグローバルに躍動し、高い収益を上げている。日本はこうしたニッチな
技術の集団国家を目指すことができる。
GAFAもM&A(合併・買収)が社会変革を起こす原動力となっている。
小さなイノベーションを集めることで、そこから新たな方向性やグランド
デザインが見えてくるはずだ。
イノベーションを起こすのはスタートアップである。
大企業の使命はまず自らを変革することだ。
例えば、様々な分野のスタートアップと若い人材の往来を自由な発想や
スピード感を、スタートアップ企業はOJT(職場内訓練)やガバナンスに
よるリスク管理などを学ぶことでお互いの弱点を補い、それぞれの人材や
文化を多様化させる。大企業はイノベーション創出をスタートアップに
任せ、その支援に専念する。あくまで主役は彼らであり、ニッチな集団
からこの国が進むグランドデザインを見出すのが大企業の役目だ。
日本が目指す脱炭素社会や長寿社会も1つのイノベーションでは実現しない。
カギを握るにはネットワーク化と人材の流動化だ。脱炭素化は水素発電を
中心に、ニッチ分野で活躍する数多のスタートアップの技術を組み合わ
せた社会を模索する。健康寿命な社会づくりの実験特区などにそれを実装し、
日常的に産官学が交流する。脱炭素化・健康長寿というゴールを定め、
その実現のために人が流動化すれば変革の波が必ず動き出す。
この国を停滞させているのは古い時代に作られた規制や商習慣にある暗黙の
ルールだ。大企業はその両者に縛られている。スタートアップを支援する
はずのエコシステム(生態系)でさえ、大企業のビジネス習慣が足かせに
なって遅々として構築が進まない。規制やルールを潤滑に正しく機能させる
ためのもので、それを変えることはタブーではなく進化である。
規制緩和に挑むことは大企業にしかできないことだ。
ルールも社会も進化させられるのだということをいま示さなければ、
若者たちは可能性を広げることができない。戦後の規制やビジネス慣習を
突破するルールブレイカーとして変革の扉を開くのだ。
● ガバナンス
ガバナンス(governance)とは、統治のあらゆるプロセスをいう。
政府、企業などの組織のほか、領土、ITシステム、権力などにも用い
られる広い概念であることが分かる[1]。ガバナンスにおいては、関係者が
その相互作用や意思決定により、社会規範や制度を形成し、強化し、
あるいは再構成していく。 その起源は、ギリシャ語にあり、同根である
ガバメントすなわち政府と比較すると、公的な組織ではなく、関係者の
相互作用を意味する点が異なる。
近年では、企業統治のうえで不祥事の予防・対策との関係で問題とされる
事例が増えており、この場合はコーポレート・ガバナンスと呼ばれる。
● 実装
コンピューターのハードウエアやソフトウエアに新たな機能を組み込むこと。
● 遅々(ちち)
進行が遅い状況を形容する表現。 多く「進まない」を修飾する。
● 潤滑
潤いがあって、動きの滑らかなこと。また、そのさま。
「機械の作動を潤滑にする油」「潤滑な人間関係」
● タブー
ある集団の中で、言ったり、したりしてはならないこと。
法度 (はっと) 。「彼にはその話はタブーだ」
● ルールブレイカー
・ルール『rulu』
規則。規定。きまり。
「ルールに従う」「ルールを無視する」「ルール違反」
・ブレーカー『breaker』
ある量以上の電力を使ったり、異常電流が流れたりすると、回路を
自動的に遮断する装置。遮断器。
この続きは、次回に。