Coffee Blake-令和3年7月9日(金)「シニアの役割」
経営の視点
編集委員 西條 郁夫
シニア活性化、企業が左右
役職定年を迎えた、あるいは定年延長で継続雇用されたいわゆるシニア
社員についてある大手電機メーカーで周囲の評価をヒヤリング調査した
ところ、否定的な声が大半だった。
● 職場の若手からみたシニア層の評価
・明らかに時間内だけ事務所にいれば、たいして頑張らなくても給料が
もらえるというオーラを放つ人もいる。
・アドバイザー的な役割しか担わず、まるでオブジェのよう。
● 「年下上司」の訴えで、自分の先輩を部下として抱えることのやり
にくさを浮き彫りにしている。
・あまり仕事をしない。評価に響くと警告しても、今更評価で処遇が
変わるわけでもなく、効き目ゼロ。
・何をいっても、『昔の部下のおまえに指示される筋合いはない』と
反発され、面倒。
■ 多摩大学大学院で人事論を担当する徳岡晃一郎教授
「これは日本の多くの大企業に共通する声だ。従来の働き方を漫然と
続けるだけでは、働く人にも会社にも幸せな結果にならない」と指摘
する。
人生100年時代といわれるが、これは誇張ではない。
ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授は著書『ライフ
シフト』で「2007年にアメリカやフランスで生まれた子供の半分は少なく
とも104歳まで生きる。日本はさらに長寿で107歳以上まで生存する」と
いう推計を公表した。その結果、「子供と学生の時代が20年、仕事を
する40年、リタイア後の20年」という人生の基本設計が崩れ、仕事を
する年月が60年に延びる(つまり定年は80歳)という。
長時間労働ならぬ「長期間労働」の時代の到来である。
そんな時代にじっと固まったままの大量のオブジェ社員を生まないため
にはどうすればいいか。
「オブジェ社員」を生むな
政府は企業に70歳までの就業機会確保の努力義務を課す「高年齢者雇用
安定法」の改正案をまとめたが、これは問題の解決ではなく、むしろ悪化
させるだろう。政府としては働く高齢者が増えれば、年金をはじめ社会
保障負担が軽くなり、財政が楽になる。だが、肝心の働き手が生き生きと
仕事をできないなら、本人や周囲の同僚、企業には重荷である。
職場の閉塞感が高まり、逆に企業の活力を低下させる恐れさえある。
■ パーソナル総合研究所の小林祐児主任研究員
「シニアの不活性の主な原因は企業にある」という。
日本企業の人材投資は新入社員と管理職に集中し、そこから外れたミドル層は
「言葉は悪いがほったらかしになりがち。これではやる気もわかない」と
指摘する。
ソニーやYKKのようにミドル層を対象にしたキャリア設計研修などに力を
入れる企業もあるが、まだ一握りにすぎない。
一方で働く側の意識改革も欠かせない。社外での学習や自己啓発に取り
組む会社員の比率は日本は他国に比べて非常に低い。自らのスキルや技能の
「鍛え直し」「学び直し」に主体的、戦略的に取り組む姿勢が重要になる
だろう。
● 役職定年制
「役職定年制」は、役職段階別に管理職がラインから外れて専門職などで
処遇さ れる制度であり、大手企業では1980年代以前から導入した企業も
あるが、概ね1980 年代から行われた55歳定年制から60歳定年制への移行に
際して、主に組織の新陳代 謝・活性化の維持、人件費の増加の抑制などの
ねらいで導入されたケースと、1990 年代以降に職員構成の高齢化に伴う
ポスト不足の解消などのねらいから導入された ケースが多いとされている。
役職定年制は、企業規模が大きいほど導入している企業の比率が高く、
500人以上 の企業では、4割弱の企業が導入している。(表1参照)
役職定年制の実施企業は、近年減少傾向にあり、1000人以上の企業では、
平成11 年から平成19年までの間に10%ポイント以上減少している。
(参考:中央労働委員会 調査)
● 継続雇用制度
「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も
引き続いて雇用する、「再雇用制度」などの制度をいいます。
この制度の対象者は、以前は労使協定で定めた基準によって限定することが
認められていましたが、高年齢者雇用安定法の改正により、平成25年度以降、
希望者全員を対象とすることが必要となっています。
● オブジェ
オブジェ (仏:Objet)は、事物、物体、対象などの意味を持つ、英語では
object(オブジェクト)にあたる言葉。
主に美術用語として用いられ、(フランス語や英語ではObjet d’art(英語版))
その場合には自然物、工業製品、廃品、日用品など、またはそれを使用して
—-思想としてのオブジェ[編集]—-
仏文学者の澁澤龍彦が好んで用いた概念。人間を物自体としてとらえる
その考え方は、マゾヒズムの基盤ともなる思想であり、その中ではあら
ゆる存在が唯物論的観点の元で対等になる。
さらにそこへ美という観念を加え、その対象をオブジェと称した[2]。
● 人生100年時代
人生100年時代とは、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』の著者である
リンダ・グラットン教授が提言しました。
人生100年時代とは、「寿命が(100歳前後まで)今後伸びていくに
あたって、国・組織・個人がライフコースの見直しを迫られている」と
いう内容を表す言葉として登場します。
つまり個人の人生設計といった狭義にとどまらず、国家的な課題である
ことを初めて社会に訴えかけたのです。長寿国家として名高い日本でも、
2017年9月に日本政府によって「人生100年時代構想会議」が開催されて
います。
● 高年齢者雇用安定法
改正高年齢者雇用安定法(2021年4月1日施行)のポイントを解説!
2020年3月31日に改正高年齢者雇用安定法が公布されました。
この改正により、雇用する労働者について、現行法で定められている65歳
までの雇用確保義務に加え、70歳までの就業確保措置をとることが努力
義務として追加されます。2021/03/29
● キャリアデザイン
「キャリアデザイン」とは、将来のなりたい姿やありたい自分を実現する
ために、自分の職業人生を主体的に設計し、実現していくことです。
キャリアデザインが注目される背景には、バブル崩壊後に終身雇用や
年功序列などの日本的雇用慣行が終焉なくなりつつあり、成果主義や
中途人材の登用が一般的になってきたことがあります。キャリア形成や
ライフスタイルを会社に委ねるのではなく、自分で実現する「自律型
人材」が求められているのです。
実際にキャリアデザインを設計する際は、
・知識・スキル
・行動特性
・仕事に対する価値観
・周囲に期待されていること
・目標やありたい姿
などを洗い出し、自己理解を深めた上で、目標やありたい姿になるために
どのようなキャリアを築くべきなのかというプロセスやアクションを明確に
していきます。ただ単に職歴を決めるのではなく、価値観やライフスタイル
まで含め、自分らしく働くためにどのような職業を選択するのかを決める
のが「キャリアデザイン」なのです。
この記事については、我々、シニア層には大変参考になると思います。
やはり、定年後の「働き方」については、それぞれの考え方があると
思いますが、以前にも「代表のブログ」でご紹介致しましたが、
「あるシニア層が就活の際に、〝貴方の得意とする仕事は何ですか〟と
言うキャリアカウンセラーの質問に対し、〝書類に承認印を押すこと
です〟と答えたシニアがいました」と。
これを聞いて、私は大声で笑い、「そんな人もいるな」と改めて再認識
致しました。
自分のキャリアの棚卸しをすることで、得意、不得意を分析すべきですね。
得意とすることは、よりベターに、不得意とすることは、よりベターに、
そしてよりベストに。
私の好きな言葉である『日日に新たに』を思い出して下さい。
『日日に新たに』
中国の古典・「四書五経」の中の『大学』に出てくる次のことばが出典です。
苟に日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり
(苟日新、日日新、又日新)
[意味]
きょうの行いはきのうよりも新しくよくなり、
明日の行いはきょうよりも新しくよくなるように
修養に心がけねばならない。
殷の湯王はこれを盤、すなわち洗面の器に彫りつけて
毎日の自誡の句とした。
(『中国の古典名言辞典』・講談社学術文庫)
[註]
苟に:(まこと)に
殷の湯王:殷王朝の創始者で、聖天子として知られる。
〝初心、忘れべからず〟–自分が新入社員の時を思い出し、〝素直に〟
〝積極的に〟〝頭(こうべ)を垂れて〟—で、仕事に望めば、嫌な思いは
しないと思います。それでも嫌な思いをするならば、相手の人間性を疑い、
〝諭す〟必要があります。それが、〝年長者〟の役割であると肝に銘じ
たいと思います。
2021.7.9
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美