Coffee Blake-令和3年7月14日(水) 読売新聞「あすへの考」③
もはや豊かな先進国ではない
「日本は安い国になった」
最近そんな声を耳にします。私は香港のホテルでビールを注文したところ
1500円以上取られてびっくりしたことがあります。
国内にいては、わからないかもしれませんが、日本の物価は今や欧米や
一部のアジア諸国と比べて低水準です。コロナ禍で下火になっていますが、
訪日外国人(インバウンド)がどっと増えた一因は「日本の安さ」にも
あるのです。
日本人にとって「日本が世界でも指折りの経済大国」であることは当たり
前の話でした。その常識が崩れ始めているのです。
なぜそうなったのでしょうか。
バブル崩壊以降、日本経済はほぼ「ゼロ成長」の状態が続いており、
賃金水準は上昇していません。この間、先進諸国は国内総生産(GDP)を
1.5倍から2倍に拡大させました。
日本は相対的に貧しくなったわけです。「今はもう豊かな先進国では
ない」と言うのが実情です。
日本経済が成長を止めた理由の一つには、「ビジネスのIT化」にうまく
対応できなかったことがあります。
物価安がインバウンドの一因。
改革を怠り、競争力低下
1990年以降、パソコンが普及しました。先進諸国の多くの企業は、普及と
同時並行で、ビジネスのIT化を積極的に進めました。
ところが日本は「従来型の産業モデル」にしがみついて、改革を怠りました。
その結果、業務の効率化が進まず、生産性も伸びていません。
国際競争力は低下したままです。確かにエレクトロニクス製品など日本製が
世界市場を圧巻したことがありましたが、それは過去の話です。
全世界の輸出における日本のシェア(市場占有率)は低く、今や日本は
「輸出大国」ではありません。
<補足>
● ゼロ成長
生産・消費・輸出入・人口などの規模が前年度と変わらないか、または
減少・縮小傾向にあること。
● 賃金水準
労働者に支払われる賃金の金額の水準のことを指す。 国や企業、年齢などに
よる水準を算出する際には、通常、平均値で示される。
● 先進諸国
先進国(せんしんこく、英: Advanced country、Developed country)とは、
高度な工業化を達成し、技術水準ならびに生活水準の高い、経済発展が
大きく進んだ国家のこと。対義語は「後進国」であったが、侮蔑的と
されるようになったため、現在では発展途上国(開発途上国)の呼称が
一般的である。
先進国とは、主に経済が大きく発展している国々のことをいいます。
先進国と呼ばれるための定義はなく、経済や技術が発展しており、生活
水準が高いといわれている国々の総称となっています。
主要国首脳会議は現在G8(ジーエイト)と呼ばれ、日本、アメリカ、
イギリスなどの先進国と呼ばれている国々が参加しています。
● 国内総生産(GDP)
GDP(国内総生産)とは、国内で一定期間の間に生産されたモノや
サービスの付加価値の合計金額のことです。民需に加え、政府が使った
お金である「政府支出」と輸出額から輸入額を差し引いた「貿易収入」 を
合計した金額がGDP(国内総生産)となります。2019/05/09
● 相対的
相対的とは、何らかの比較の上で成り立つ様子や評価のことである。
そしてその比較対象の関係次第で、お互いの評価や立ち位置が変動する
のが特徴である。似た言葉として比較的が挙げられるが、こちらは相対的
よりも曖昧な意味合いを多く含んでいる。
● ビジネスのIT化
IT化とは、これまでアナログで行っていた作業や業務をデジタルに置き
換えていく作業のことです。たとえば、毎日紙の伝票と電卓を使って
行っていた店舗売上の集計を、注文・会計システムの導入によって自動化、
または半自動化してしまうといった変化のことを指します。2021/01/12
● 業務の効率化
「業務効率化」とは、業務上の課題(ムダ・ムリ・ムラ)に対して改善を
図り、効率的に業務を遂行できるようにすることです。
手間と時間をかけて管理していた/まったく管理できていなかった業務が、
アプリ活用によって簡単に管理できるようになり、結果として、労働負担の
軽減やコスト削減などに繋がることがイメージできます。
※少ない労力で今と同じ成果を出す、というのは、一見、業務効率化に
聞こえますが、成果をあげることが目的であるため、「生産性向上」に
該当します。業務改善によりコスト削減が実現し、利益が上がれば生産性
向上にも繋がりますが、「業務効率化」の目的は業務改善であり、目的が
異なります。もちろん「業務効率化」の結果として「生産性向上」も連動
して見えてくる、こととなります。
● 生産性向上
「生産性向上」とは、現在の限られた労働力(経営資源)のなかで今よりも
成果を高めること、または、少ない労働力(経営資源)で今と同じ成果を
出す、ということが定義されています。ここでは成果≒売上や利益とお考え
ください。HPやECサイトの導入などによって、営業力が拡大・強化して、
「生産性向上」に繋がっていくことがイメージできます。
● 国際競争力
一国の産業・企業、あるいはその製品・サービスが、国際市場でシェアを
拡大し、市場に影響を与える力。また、国や都市が、他国から企業や人材を
呼び込み、経済的な繁栄を達成する能力。
IMD世界競争力ランキングでスイスが初の1位に した世界競争力ランキング
2021で、スイスは1位を獲得した。 スイスは前年3位で、スイスが1位を
獲得するのはランキングが開始された1989年以来、今回が初となる。
2位はスウェーデン(前年は6位)、3位はデンマーク(2位)で、前年に
1位だったシンガポールは5位に後退した。2021/06/23
● エレクトロニクス製品
・エレクトロニクス【electronics】
「電子工学」に同じ。エレクトロニックス。
・電子工学
電子伝導、およびその現象を応用する装置・技術についての学問。
エレクトロニクス。
● 市場占有率
ある製品の売上高が、産業全体の売上高に占める割合。市場占拠率。
● 輸出大国
「ものづくり大国」日本の輸出が少なすぎる理由
先ほどから、私は日本を「輸出小国」と表現していますが、もしかしたら
その言葉に違和感を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、日本は輸出総額が世界第4位なので、この順位だけを見ると
輸出大国のように見えるかもしれません。
● 各国の輸出状況
1. 中国 2. アメリカ 3. ドイツ 4. 日本 5. 韓国
9.香港 13. シンガポール 14.台湾
しかし、その輸出総額は、第3位であるドイツの約半分です。ドイツの
人口は日本の約3分の2しかないことを考えれば、日本の輸出が決して
多くないのは明白です。事実、対GDPの輸出額の比率では日本は世界で
117位ですし、人口1人当たりで見ると世界44位です。つまり、日本は
紛れもなく輸出小国なのです。
日本の潜在能力を考えれば、輸出を増やす余地はまだまだあり余って
いると言ってもいいと思います。輸出小国にとどまっているべきでは
ないのです。
<2019年データ>
第1位:アメリカ(15兆2500億円)
第1位は「アメリカ」。2019年のデータでは、輸出総額は15兆2500億円、
輸出シェアは19.8%となりました。日本からアメリカに輸出されている
物は、自動車や自動車部品などが多くを占めているようです。
アメリカは日本の「輸入先」としても第2位となっており(2019年の
データより)、日本にとって最大の貿易相手国のひとつと言えます。
一方アメリカは、日本よりもカナダやメキシコ、中国との貿易取引が
多い傾向にあるようです。
第2位:中国(14兆6800億円)
日本の輸出相手国・第2位は「中国」。2019年のデータによると、輸出
総額は14兆6800億円、輸出額全体におけるシェアは19.1%となりました。
日本から中国へ輸出されている物は、半導体などの電子部品や光学機器、
自動車、プラスチックなどが多いようです。
戦後、日本の輸出相手としては、長きにわたってアメリカがダントツと
なっていました。しかし、2008年のアメリカの金融危機以降は、中国と
アメリカがトップを争う形が続いています。ちなみに中国は、日本の
「輸入先」としては第1位の国となっています(2019年のデータより)。
○ 私見
「隣国が豊かになった」
私が35年前、満31歳の時に海外旅行で妻と香港に行った時のレートが、
21.6香港ドル/円で2021.6.16現在は、14.26香港ドル/円となります。
このように、レートで比較しても、以前に比べれば他国が強くなったのか、
日本が弱くなったのかの比較は、安易にはできません。
ただ、「貧しいよりは、豊かである方が良い」と思うのは、間違いでは
ないと思います。
コロナ禍前は、日本も訪日外国人(インバウンド)を4000万人目標として
いました。2019年には約3188万2000人でしたので、東京オリンピック・
パラリンピック開催の2020年には、目標4000万人は100%達成していたと
思います。訪日外国人が増加した理由は、いろいろとあると思います。
訪日外国人の国別では、中国、韓国、台湾、香港の順に多くなっております。
これは、隣国である国々が豊かになり、観光やビジネス等で日本を訪れる
機会が多く持てるようになった、というのが一番の要因ではないでしょうか。
私たち日本人も全く、同じ道を歩んできていると思います。
従って、「よその国が豊になった」から「日本は安い国になった」と
感じるのではないでしょうか。
「IT化推進には、頭の柔らかい方が必要」
皆さんは、「ワープロ」をご存知でしょうか。
私は、35歳頃から会社で書類作成、企画書作成等で使い始めました。
パソコンも会計ソフト、給与ソフト等で同じ時期から使い始めたと
思います。
Word、エクセル等は、45歳頃からと思います。
今の若い方達は、生まれた時からパソコン等がありましたので、私たち
よりも随分、精通していると思います。
それでは何故、「IT化」が遅れているのでしょうか。
私は、「教育制度」と「我々、頭のかたい人たちが決めている」ことに
問題があると思います。
私もそうですが、「IT」を理解していない、得意ではない人たちが先頭を
走ってはいけません。理解している、得意な人たちで、先頭を走って
いただき、理解していない、得意ではない人たちを引っ張っていただ
かないと困ります。
従って、「頭の柔軟な人たちが先頭に立って、進めていただきたい」と
いう「教育制度」が大事だと思います。今後、将来的に役に立たない、
すたれていくかもしれない知識等々を学んでも、多少価値はあると思い
ますが、優先すべきことが別にあるように感じます。
「内面の豊かさ、強さが大事」
「イノベーション」という言葉をよく耳にするようになったのは、私が
15.6年前-50歳代ではないでしょうか。その当時、私は、ピーター・
ドラッカーの書籍を次から次へと読んでおりました。
きっかけは、「ベンチャー」という言葉からでした。
現在でも、ピーター・ドラッカーの書籍は継続して読んでいますが、
「気持ち」の在り方、「モチベーション」関連が若い時に比べて増えた
ように感じます。もちろん、年齢のせいもあると思いますが。
そこで思うのが、「読書」をおすすめしたい。
デジタル化といわれていますが、アナログも捨てたものではないと思い
ます。「内面を豊かに、強くする」ことで、これからの競争には勝てると
思います。
これまでの「大量生産、大量消費」から、いろいろと見直しがされて
おります。「ハード」から「ソフト」へ移行されてきていますが、
「変わらない」ことは、必ずあります。
私は、「ハード」「ソフト」の「競争」は必要と思いますが、「ハート」=
「内面を豊かに、強くする」競争を心がけたいと思います。
この続きは、次回に。