実践するドラッカー[思考編] ⑦
A lesson from P.F.Drucker
∵ 自らをマネジメントする
知識労働者は自らをマネジメントしなければならない。
自らの仕事を業績や貢献に結びつけるべく、すなわち成果をあげるべく
自らをマネジメントしなければならない。
『経営者の条件』—-p.21
知識労働者に対する肉体労働者は、<manual worker> という言葉で
表現されています。<manual>は「手先の」、あるいは「手を使った」と
いう意味です。
あまりいい意味ではありませんが、「決められたことを自分で判断せずに
そのまま行う」という意味の「マニュアルどおり」という耳慣れた言葉が
浮かんできます。
マニュアル仕事は、その場で見ていればさぼっているかどうかがわかり
ました。
一○分で一○個の荷物を運べる者が六個しか運ばなければ、監督する者は
その場で注意できます。しかし、知識労働者の仕事は、頭をフル回転させて
いるかどうかにかかっているので、そばで見ていてもわかりません。
一日中パソコンの前に座り、定時に帰った人が、その日によい仕事を
したかどうかを他人が判断することはできません。
これが知識労働者の特性です。第三者が管理・監督するよりほかはあり
ません。
組織に貢献しようと心に決め、自らの手でエンジンに火をつけ、スタートを
切ることでしか、成果を手にすることはできません。
セルフマネジメントだけが、知識労働者をマネジメントする唯一の方法
なのです。
A lesson from P.F.Drucker
∵ 第一の週間を身につける
第一に身につけるべき習慣は、なされるべきことを考えることである。
何をしたいかではないことに留意してほしい。
『経営者の条件』—-p.3
組織に属する知識労働者は、組織への貢献を通して社会的役割を果たす
ことを期待されています。その使命を無視して、自分のしたいことを優先
させるのは本末転倒です。
そこで、成果をあげるための優先順位を<must-can-will>で考えます。
まず「must=なされるべきこと」、次に「can=できること」、最後に
「will=やりたいこと」を問うのです。しかし、「なされるべきこと」は、
「できること」に制約されます。ですから、「できること」を着実に
増やし、「なされるべきこと」の範囲を広げていかなければなりません。
将来的に期待されるであろう「なされるべきこと」を意識すると、いま
不足している能力が見えてきます。一つ階段を上がったら、再び足りない
ところを見つけて鍛える、その繰り返しが自分自身と組織を成長させて
いきます。
自分と組織の「やりたいこと」が一致していれば、最高の成果を期待
できます。
個人で仕事をする場合はさておき、組織で仕事をする人は、決してこの
順番を間違ってはいけません。
もし、「なされるべきこと」と、「できること」「やりたいこと」が
まったく異なるのであれば、とるべき行動はただ一つ、その組織を去る
ことです。能力や意欲の問題ではなく、その組織で求められる貢献の形と
合っていなかったということです。年月を無駄に費やさないためにも、
日々の仕事を<must-can-will>で行いながら、同時に、そこにミスマッチが
ないかどうかを考えてください。
この続きは、次回に。