お問い合せ

実践するドラッカー[思考編] ⑩

A lesson from P.F.Drucker

 

∵ 習得できないもの

 

真摯さは習得できない。仕事についたときにもっていなければ、あとで

身につけることはできない。真摯さはごまかしがきかない。

一緒に働けば、特に、部下にはその者に真摯であるかどうかは数週間で

わかる。

『現代の経営<上>』—-p.218


 

ドラッカー教授は、マネジメント能力、リーダーシップ、企業家精神など

ほとんどの能力は、後天的に身につけることができるといいます。

そのことは、私たちに希望を与えてくれます。

しかし、「真摯さだけは、身につけることができない」。

この言葉には、とても緊張させられます。

自己中心的で、組織やともに働く仲間のことをまったく考えない者が

組織を破壊する、といった例は理解できます。しかし、真摯さを定義する

ことは、とても難しいことです。

ドラッカー教授は、次の質問をすることで、その者が真摯であるか否かが

わかるといいます。

「その者の下で自分の子供を働かせたいと思うのか」

また、組織で働く者の真摯さとは、見返りを求めない親や教師の心構えで

人に接することに等しいともいいます。

企業の社会的責任が問われるようになった昨今、ようやく、真摯さという

言葉が、ビジネスの世界でも重要視されるようになってきました。

しかし、他者に真摯さを求めるばかりではいけません。

自らにも、常に問い続けなければならないのです。

 

● 真摯

 

ひたむきに、誠実に事に当るさま。

 

● 後天的

 

 生まれてからのちに身にそなわるさま。 「後天的な性質」⇔先天

 

 

A lesson from P.F.Drucker

 

∵ 組織のミッションから始める

 

組織に働く者の場合、自らの成長は組織のミッションと関わりがある。(中略)

仕事のできないことを、設備、資金、人手、時間のせいにしてはならない。

それではすべてを世の中のせいにしてしまう。よい仕事ができないのを

それらのせいにすれば、あとは堕落への急坂である。

『非営利組織の経営』—-p.206


 

うまく契約が取れない、クレーム対応に追われるなど、仕事には悩みや

困難がつきものです。しかし、それが人を鍛え、人を成長させます。

趣味で自己実現を果たしにくいのは、仕事ほど多様な難題がないからです。

生死をさまよう経験によって器が大きくなるのは、そこに想像を絶する

苦悩があるからです。その点、仕事は日常的に多くの成長機会を与えて

くれる得がたいものです。

そのためには、「仕事の意味」を考えなければなりません。

仕事が真に意味を持つのは、組織のミッションによって決まります。

スタートは、組織のミッションです。組織は何のために生かされ、存在

しているのか。そこに込められた思いを確認することで、自分のなすべき

ことや、足りない部分が浮き彫りになります。

上手くいかないのを環境や人のせいにすれば、思考停止を招き、成長の

機会を逃します。自分のいたらなさを知り、試練をチャンスと前向きに

とらなければ、成長を続けることができます。

成長にゴールはありません。あなたが望めば、どこまでも成長することが

可能なのです。

 

● ミッション

 

ミッションには「目的、使命、存在意義、役割」という意味がありますが

経営ではその組織や個人が社会において果たすべき使命や任務のことを

いいます。2020/02/12

 

● 堕落

 

生活がくずれ、品行がいやしくなること。節操を失うこと。

身をもちくずすこと。「酒がもとで堕落する」

 

 

A lesson from P.F.Drucker

 

∵ 卓越性を追求する

 

自らの成長のために最も優先すべきは卓越性の追求である。

そこから充実と自信が生まれる。能力は、仕事の質を変えるだけでなく

人間そのものを変えるがゆえに、重大な意味をもつ。能力なくしては、

優れた仕事はありえず、人としての成長もありえない。

『非営利組織の経営』—p.206


 

ドラッカー教授は『すでに起こった未来』の中で、長い修行を経て高い

精神性を獲得し、禅の始祖となった達磨大師のことを、「知識ではなく

叡智に、力ではなく自己規律に、成功ではなく卓越性に焦点を合わせた

生き方」と表現しました。

卓越性は、意識して作る者です。必要に応じて誰かに相談してもいいの

ですが、最終的には自分で決めなければなりません。

卓越性を追求するプロセスは、三つです。

 

・卓越性を得る分野や能力を決めること

・それを獲得するために、時間やエネルギー、お金などを集中させること

・卓越性を究めるために自分の強みを徹底的に利用すること

 

これらの数か月から数年実践していけば、成果とともに少しずつ自信が

ついていきます。

すると、「あの人は違う」と周りの人が認め出します。

それが、卓越性が生まれる瞬間です。他者から認められると、ライバルが

出現します。勝ったり負けたり、喜んだり苦悩したり、といった経験は

成長のための貴重な糧となります。いつしかライバルもいなくなるかも

しれませんが、それでも自分との戦いは続きます。

卓越性の追求に欠かせないのは、常に一歩でも高みを狙い、実践を積み

続けていくことなのです。

 

● コラム 卓越性を挙げてみる

 

卓越性にはどのようなものがありうるでしょうか。

有名人を例に、思いつくかぎり、具体的に挙げてみましょう。

 

 

・ナイチンゲールの「利他の精神と献身の姿勢」

・アインシュタインの「好奇心の豊かさ」

・徳川家康の「揺らぎのない忍耐力」

・篤姫の「私心のない実行力」

・盛田昭夫と井深大の「互いを生かし合う力」

・スティーヴ・ジョブズの「世界中にファンをつくるプレゼン力」

・イチローの「日々同じ練習を正確に継続する力」

 

また、家族や職場など、身の回りの人の卓越性を挙げてみるのもよいで

しょう。

 

 

・直接の上司の「厳しさのある温かさ」

・一番エネルギッシュな同期の「業績達成への執着心」

・高校時代のクラスメートの「純粋に感動する心」

・いざとなったときの母親の「少々のことでは動じない強さ」

 

自分自身の卓越性を探していくうえで行き詰まったら、いろいろな人の

卓越性を考えることが、参考となるはずです。

 

● 卓越性

 

「”卓越“とは、他にぬきんでてすぐれていること。 ひいでること」とある。

つまり、”卓越性“とは、抜きんでた実力のことである。2013/11/05

 

 

この続きは、次回に。

 

トップへ戻る