実践するドラッカー[思考編] ⑪
A lesson from P.F.Drucker
∵ 適所を自ら探す
成長するには、ふさわしい組織でふさわしい仕事につかなければならない。
この問いに答えを出すには、自らがベストを尽くせるのはどのような
環境かを知らなければならない。
『非営利組織の経営』—p.212
成長は、仕事を通じて成果とともにあります。したがって私たちは、自らの
能力を開発し、最も能力を発揮する。あるいは伸ばすにふさわしい環境を
探さなければなりません。つまり、適材適所を自分で行うのです。
それには三つの基準が必要だとドラッカー教授はいいます。
・自分の強み
・仕事の仕方
・価値観
ドラッカー教授は、一八歳で貿易商社の見習いとして社会人になって以来、
投資銀行の証券アナリスト、新聞記者、パートナー秘書など数々の職を
経て、コンサルタントと大学教授の仕事にたどり着きました。
後にドラッカー教授は、自分の強みを模索したこの十数年が「人間形成期」
だったと語っています。「現場で考え、教え、書く」ことを通して世の
中に貢献していくという、教授ならではのスタイルの原型がつくられた
のが、この頃でした。
そして、三二歳で第二作『産業人の未来』を上梓、人生の発展期に入って
いきましたが、教授はそれ以降も常にベストを求め続けました。
五八歳のとき、新聞記者から「お仕事は」と尋ねられ、「いや、まだわから
ない」と答えたほどでした。
A lesson from P.F.Drucker
∵ 次元を変える
仕事が刺激を与えるのは、成長を期しつつ、自ら興奮と挑戦と変化を
生み出すときである。これが可能となるのは、自らと仕事の双方を
新たな次元で見るときである。
『非営利組織の経営』—p.218
人は飽きやすいものです。放っておれば、一過性のスランプ状態では
済まなくなるかもしれません。
自らを飽きさせない工夫は、セルフマネジメントの意外に重要なポイン
トです。
ドラッカー教授はこんな例を紹介しています。
あるクラリネット奏者は、指揮者に勧められて初めて客席から演奏を聴き、
「初めて音楽を聴いた」と驚き、目から鱗が落ちたそうです。
それまでは自分のパートを上手に吹くことで頭がいっぱいだったのが、
音楽全体が聴こえるようになったのです。
その後も演奏する行為自体は変わりませんが、視点を変えたことで、
仕事に新たな意味を加えることです。
こうした成長の機会を得るには、まず成長したいと願うこと、そして、
自分や仕事の見方を変えることです。
世界の頂点に立ったアスリートでも、その後の人生で成功を収めるとは
かぎりません。表彰台に立つことが目的であれば、燃え尽きてしまうで
しょう。再び自分を奮い立たせるには、例えば、メダルの意味を通して
子供たちに挑戦する素晴らしさを伝えるなど、目的をバージョンアップ
させる必要があります。
それでもうまくいかないなら、行動を変えましょう。小さな変化で十分
です。
普段なかなか話を聞くことができない先輩やお客様から話を聞いたり、
長めの休暇をとっていつもと違う環境に身を置いたりすることです。
飽きたり燃え尽きたりという状態は、誰にでも訪れます。
そこで何を変えられるかが問われています。
この続きは、次回に。