実践するドラッカー[思考編] ⑫
A lesson from P.F.Drucker
∵ 予期せぬ成功を追求する
自らの成長につながる最も効果的な方法は、自らの予期せぬ成功を見つけ、
その予期せぬ成功を追求することである。ところがほとんどの人が、問題に
ばかり気をとられ成功の証しを無視する。
『非営利組織の経営』—-p.218
いつもより早く契約を結ぶことができた。スムーズに企画書がまとまった。
私たちはこんな日常の経験を、たまたまうまくいったからだと思いがちで、
振り返ることをほとんどしません。しかし、そこに宝の山があるのです。
「予期せぬ成功」は、機会の存在を暗示しています。きちんと検証すれば、
成長の機会をとらえやすくなるはずです。また、すでに体験したことを
そこで生かすことができれば、機会が来てから慌てて取り組むよりも格段に
成功しやすいはずです。そもそも成果は、機会と強みの両方がそろった
時に生まれるものです。「予期せぬ成功」の裏に、自分が気づいていない
強みが発揮されていたかどうか、確認してみてください。
同じことが「予期せぬ失敗」についてもいえます。準備万端、自信満々
行ったことが上手くいかない。このとき私たちは、全部が駄目だったと
考え、次の挑戦に移ってしまいがちです。
そもそも「予期せぬ失敗」は、自分の強みをベースに成功を当て込んで
いたからこそ発生するのです。どこに問題があったのか、徹底して分析
しましょう。ほんの一部を修正する修正するだけで、大きな成果を生み
出すことは十分にありえます。
日々の問題解決も大切ですが、折に触れて、このような振り返りの機会を
もちましょう。過去の行動の中には、価値あるものが潜んでいます。
A lesson from P.F.Drucker
∵ 成長のために教える
人に教えることほど、勉強になることはない。人の成長の助けとなろうと
することほど自らの成長になることはない。
『現代の経営<上>』—-p.262
仕事で学ぼうとすると、通常はインプットに重点が置かれます。
本やセミナーから情報を仕入れ、咀嚼し、試行錯誤して実践しながら価値を
生み出そうとするわけです。しかし、学びのプロセスを強化するには、
アウトプット面を意識すべきです。
第一に、成果を明確にすること。資格試験を受けるのは、合格するため
ではなく、資格を得て、その道の専門家として働くためです。
目的を意識すれば、学びの意欲はさらに高まります。
第二に、教えること。事の本質を理解したうえでなければ教えられませんし、
背景や周辺知識を調べ、準備することで理解は一段と深まります。
また、わかりやすく伝えるスキルを身につけることで、学びの質が高まります。
大切なのは、出し惜しみしないことです。すべて出し尽くすと、不思議
なことに、空になったスペースに最新の知識や情報がするすると入って
くるのです。
教えることは、成長するための強力な道具です。
自分のもてる最高のものを伝えようと努力することで、自然に強みも
磨かれていくからです。
ドラッカー教授自身、九五年の生涯のうち、六○年以上を大学で教え続け
ました。二○世紀の知的遺産は、教え続けることの賜物でもあったのです。
この続きは、次回に。