実践するドラッカー[思考編] ⑬
A lesson from P.F.Drucker
∵ 定期的に振り返る
毎年八月につくる計画どおりに一年を過ごせたことは一度もない。
だがこの計画によって、私はいつも失敗し、今後も失敗するであろうが、
とにかくヴェルディの言った完全を求めて努力するという決心に沿って、
生きざるをえなくなっている。
『プロフェッショナルの条件』—-p.103
ドラッカー教授の「人生を変えた七つの経験」から、トラッカー青年が
二二歳頃のものを紹介します(後出のコラム参照)。
第一次世界大戦は社会から中堅の人材を奪い、ドラッカー青年は恐ろしい
ほどの若さで論説委員に抜擢されました。
その経験不足を補うため、編集長直々に指導に乗り出すこととなりました。
ポイントは、定期的に検証と反省を行うことです。
まず、毎週末に、一週間の仕事ぶりを振り返る。さらに、半年ごとに、
土曜の午後と日曜日に仕事ぶりを振り返るのです。
その内容は、下記の問いを順番に考えていくことです。
・優れた仕事は何か
・一生懸命やった仕事は何か
・一生懸命やらなかった仕事は何か
・お粗末な仕事や失敗した仕事は何か
・集中すべきことは何か
・改善すべきことは何か
・勉強すべきことは何か
以上の方法は、実は一○年ほど経ってから思い出したのだと、ドラッカー
教授は告白しています。
それ以来、教授は毎年八月に二週間ほどかけて、一年を振り返るとともに、
次の一年のやるべきことの優先順位を決める機会を必ず設けることにした
そうです。
定期的に自らを省みる機会は、意外と少ないものです。
手帳で行うとか、誰かと行うとか、やらざるをえない仕組みをつくることが
ポイントです。長年続ければ、フィードバック効果が表れてきます。
コラム 「人生を変えた七つの経験」に学ぶ
「人生を変えた七つの経験」は、ドラッカー教授の一八歳から四○歳までの
経験を著したもので、教授がどのようにして哲人と呼ばれるまでに成長して
いったか、その一端をうかがえる優れたエピソード集です(『プロフェッショ
ナルの条件』に収録)。
あのドラッカー教授をして、「人生を変えた」といわしめた経験とは、
いったいどんなものでしょうか。一読すると、誰にも似たような経験が
一つや二つあることに驚かされることでしょう。
そこには、成果をあげ、成長を続けるためのメッセージがあふれています。
・目的とビジョンをもって行動する—-ヴェルディの教訓
・神々が見ている—–フェイディアスの教訓
・一つのことに集中する—-記者時代の決心
・定期的に検証と反省を行う—編集長の教訓
・新しい仕事が要求するものを考える—-シニアパートナーの教訓
・書きとめておく—-イエズス会とカルヴァン派の教訓
・何によって知られたいか—シュンペーターの教訓
特筆すべきは、「七つの経験」すべてが「本」か「人」から影響を受けたと
いう点です。それらの出会いから、何に気づき、何を学ぶか。
ドラッカー教授は、完全を目指す姿勢やフィードバック分析、自己刷新などを
学んでいます。
もう一つ注目すべきは、本や人から得た学びを、すべて実践している点です。
実践することは学びそのものであり、学ぶことは、成長そのものなのです。
出会いと実践なしには、一つの成果も生まれません。実践が習慣化して
初めて、成果を連続してあげられるようになります。
習慣とは、心の姿勢と行動を通して気づきを血肉化することです。
思考習慣と行動習慣が相まって、成長のエンジンが形成されます。
成果は自信を生み、地震が積もってさらなる高みを目指していく。
ドラッカー教授に倣い、生涯の成長を目指しましょう。
この続きは、次回に。