実践するドラッカー[思考編] ⑯
A lesson from P.F.Drucker
∵ 三つの領域
あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。
すなわち、直接の成果、価値への取り組み、人材の育成である。
これらすべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐りやがて死ぬ。
したがって、この三つの領域における貢献をあらゆる仕事に組み込んで
おかなければならない。
『経営者の条件』—-p.81
私たち一人ひとりの貢献を通じて、組織として成果をあげるべき三つの
領域をしっかりと認識しておくことはとても重要です。
「直接の成果」は、売上げや利益、顧客の数など、一般的に私たちが成果と
呼んでいるものです。「人材の育成」は、あらゆる階層や場面で必要ですが、
とりわけトップの後継者育成は難しく、また時間のかかるものです。
「価値への取り組み」と「価値」にはいくつもの意味が含まれていますが、
そのうち重要な二つを説明します。
第一に、「顧客価値」への取り組みです。
他に選択肢があるのに、顧客がなぜ、店に足を運んでくれるのか。
なぜ注文してくれるのか。
顧客が支持してくれる理由を明らかにすることです。
ドラッカー教授は『想像する経営者』の中で、事業とは「買わないことを
選択できる第三者が、喜んで自らの購買力と交換してくれるものを提供
することである」といいました。
人を喜ばす力の大きさが、顧客価値を決めます。いい換えれば、顧客が
喜ぶ付加価値をいかに提供できるか、です。
第二に、「組織の価値観」への取り組みです。
組織という土壌に手をかけることで、その土壌にふさわしい種が芽を出し、
花を咲かせ、実をつけます。
その結果が土壌をさらに豊かにするように、その組織に合った人材が育ち、
才覚を現すことで、組織もまた豊かになります。
学ぶ土壌が人をつくり、それらの人がまた土壌をつくる。
組織の価値観は、そんな好循環から生まれます。
A lesson from P.F.Drucker
∵ 貢献のリレー
ほかの者が彼の貢献を利用してくれるときにのみ、成果をあげることが
できる。
『経営者の条件』—p.30
Aさんの仕事の結果をBさんにつなぐ、さらにBさんは、Cさんへとつなぐ。
こうしていくつかの仕事の結果のリレーを繰り返して、組織の成果が一つ
生まれる。
このようなリレーの基本精神は、「貢献」です。
貢献とは、自分のためにではなく、他人のために行動することを意味します。
組織内で仕事をするということは、誰かに貢献するということです。
貢献のバトンを次の人に上手く渡すことができなければ、成果に結びつき
ません。途中でバトンを落としたり、バトンを渡すときの呼吸が合わな
かったりすれば、ゴールへ到達できなかったり、到着が遅れたりします。
現実には、部署ごとの利害がぶつかったり、エアポケットが生じたり、
無関心の中に放置されたり、組織の中でスムーズにバトンを渡すことは
なかなか難しいようです。あなたの組織では、いかがでしょうか。
ドラッカー教授が『マネジメント』で貢献の考え方を世に問うたときの
インパクトは大きく、アメリカのある著名な経営者は感動のあまり、教授に
「自分の組織をそのような組織にしたいので、コンサルティングをして
ほしい」と熱烈な手紙を送ったとのことです。
この続きは、次回に。