実践するドラッカー[思考編] ⑰
A lesson from P.F.Drucker
∵ 個人と組織をつなぐ変速装置
貢献に焦点を合わせることが、仕事の内容、水準、影響力に置いて、
あるいは上司、同僚、部下との関係において、さらには会議や報告の
利用において成果をあげる鍵である。
『経営者の条件』—p.78
ドラッカー教授が「成果」という言葉を使うとき、ほとんどが「組織の」
成果を意味しています。組織社会に生きる私たちは、一人ひとりの成果
ではなく、一人ひとりの貢献を考えなければなりません。
貢献は、個人の力を駆動輪に伝える、車のトランスミッション(変則装置)の
ようなものです。組織に属する一人ひとりは、知識や技能、資質や強みを
もった存在ですが、上手く力を発揮しなければ、何の役にも立ちません。
個人の能力を組織の成果に転換するには、組織が要求する貢献は何かを、
一人ひとりが考える必要があります。
このことを「貢献に焦点を合わせる」と言います。
貢献に焦点を合わせることで、どんな仕事を、どれくらいの基準で、誰に
対して行うのか、あるべき人間関係はどのようなものか、会議の報告の
目的は何か、といったことがわかるようになります。
つまり、貢献に焦点を合わせることは、組織で仕事を行う際の基本的な
作法として身につけておくべき習慣なのです。
A lesson from P.F.Drucker
∵自由と責任
自らの果たすべき貢献は何かとの問いからスタートするとき、人は自由に
なる。責任を持つがゆえに自由になる。
『明日を支配するもの』—p.218
自由に対するイメージはどんなものですか。勝手気まま、思いどおりと
いったことでしょうか。
ドラッカー教授の考える自由は、次のようなものです。
「自由とは解放ではない。責任である。楽しいどころか一人ひとりの人間に
とって重い負担である。それは、自らの行為、および社会の行為について
自ら意思決定を行うことである。そしてそれらの意思決定に責任を負う
ことである」(『産業人の未来』)
つまり、選択の自由がある状態のことを自由だとして、具体的には下記の
ように述べています。
「何かを行うか行わないかの選択、ある方法で行うかほかの方法で行う
かの選択、ある信条を信奉するかの選択である」(同)
組織は、社会に対して何らかの役割を負うことが存在意義であり、それこそが
組織の目的です。その目的を達成するために、一人ひとりが貢献という名の
仕事を行います。社会的役割を担うがゆえに、仕事には当然、重い責任が
伴います。
「自らのなすべき貢献は何か」という問いに対する答えは、それぞれが
自分の意思で決定し、選択した行動に責任を負うという意思の表明でも
あるのです。
この続きは、次回に。