実践するドラッカー[思考編] ⑱
A lesson from P.F.Drucker
∵ セルフスターターになる
自らの果たすべき貢献を考えることは、知識の段階から行動の段階への
起点となる。問題は、何に貢献したいかと思うことではない。
何に貢献せよと言われたかでもない。何に貢献すべきかである。
『明日を支配するもの』—-p.213,214
成果は、行動なしに手にすることができません。アポイントをとるために
電話をかける、営業先を訪問し商談する、企画書を書いてプレゼンする
など、すべての仕事は、必ず何かの行為・行動を伴います。
記憶の中にある情報や能力が、行動を通して初めて意味を持つ状態に
変わるわけです。
本書三ページで見たように、一九世紀までは仕事は決まりきったもの、
あるいは、誰かに指示されるものであり、何に貢献すべきかを考える
必要はありませんでした。
いまや、一人ひとりがもつ知識を資源に、貢献という仕事の結果をつなげ
組織の成果を出す時代です。このような社会では、指示待ち人間の存在は
とても非効率です。
それ以前に、すべての指示を誰かが出すことは不可能です。
自ら何に貢献すべきなのかを考え、自ら行動を起こす「セルフスターター」
たるべきことが求められているのです。
A lesson from P.F.Drucker
∵ 焦点を合わせる方向
ほとんどの人が下に向かって焦点を合わせる。成果だけでなく努力に焦点を
合わせる。組織や上司が自分にしてくれるべきことを気にする。
そして何よりも、自らがもつべき権限を気にする。
『経営者の条件』—p.78
成果をあげたいと願いながら、焦点を合わせる方向を間違える例は後を
絶ちません。努力は大切ですが、方向を間違えては、成果どころか「コスト
の塊」に落ちてしまいます。
私たちは日々の忙しさの中で、つい、自分のことや身の回りに目を奪われて
しまいました。顔を上げ、あたりを見渡しましょう。顧客の顔、そして
社会とつながる窓が見えるはずです。そこで「なすべき貢献は何か」と
問うのです。
日々の仕事や自分の職場を見ているだけでは、答えは出てきません。
例えば、単に調理をするのではなく、美味しいという顧客の笑顔を思い
浮かべながら料理をつくる。なすべき貢献は、最高の状態で料理を提供
することであり、もっといい食材を探すことであり、調理の腕を上げる
ことです。
組織の外の人たちの期待感、それがすべてです。社内の誰が何をして
くれるか、自分の権限はどこまでかなど、気にしている場合ではないの
です。それよりも、自分が果たすべき貢献、社会や顧客が求める組織の
成果をきちんと見据えた「正しい努力」を習慣としたいものです。
コラム 「組織の成果」の例
私たちが焦点を合わせるべき「組織の成果」とは、具体的にはどのような
ものでしょうか。いくつか例を挙げて見ましょう。
あなたの組織においては、何が成果となるでしょうか。
—–産婦人科なら—-
直接の成果の例—年間総出産数、累計出産数
価値への取り組みの例—退院時に母子と父親に笑顔で帰ってもらうこと
—–水泳教室—-
直接の成果の例—-年間受講者数、卒業生の数、世界的スイマーの輩出数
価値への取り組みの例—水泳を通して心身ともに健康・健全になっても
らうこと
—ディズニーランドなら—
直接の成果の例—-年間来場者数、累積来場者数
価値への取り組みの例—お客様の笑顔の数が増えること
—-小児歯科なら—
直接の成果の例—-年間治療患者数
価値への取り組みの例—泣かないで帰った子供が増えること
—–予備校なら—-
直接の成果の例—-合格者数、現役合格者比率
価値への取り組みの例—生涯の学び方を身につけたいという卒業生が
増えること
—-旭川動物園なら—-
直接の成果の例—-年間来場者数
価値への取り組みの例—動物を見て「スゴイ」と驚いてもらうこと
この続きは、次回に。