実践するドラッカー[思考編] ㉒
A lesson from P.F.Drucker
∵ パイプラインをしく
仕事において貢献する者は、部下たちが貢献すべきことを要求する。
「組織、および上司である私は、あなたに対しどのような貢献の責任を
期待すべきか」「あなたに期待すべきことは何か」「あなたの知識や能力を
最もよく活用できる道は何か」を聞く。こうして初めてコミュニケーションが
可能となり容易となる。
『経営者の条件』—p.93,p.94
コミュニケーションの基礎は、聞くことです。
聞くためには、問うことです。しかも、ドラッカー教授のいう「正しい
問い」を用いることです。
上司は部下に対し、つい、貢献すべきことを語ってしまいがちですが、
それは間違いです。貢献とは、自らが持っている知識や能力、強みを
使って行うものだからです。
他人が外からこれらを正確に捉えることはできません。
答えは、部下自身の中にあります。それを問い、聞くことで、チームと
して仕事をするためのパイプラインができあがります。
パイプラインがなければ、どんな情報も入手できません。
コミュニケーションの回数や一回の時間を増やし、パイプラインを太く
する心がけが必要です。
さらに、パイプラインを流れる情報の「質」を高めることが大切です。
ここでは、「いま」を問うとともに、「将来」を問うことです。
なぜなら、一人ひとりに成長プランがあるからです。
部下の自己実現の手助けとなる情報を入手することは、組織の成長をも
左右することとなります。
情報過多の時代にこそ、「聞け、話すな」というドラッカー教授の教えが、
改めて大きな価値をもちます。
● パイプライン
ビジネスにおいて「パイプライン」とは、営業(セールス)担当者が
見込客を顧客へ転換する一連のプロセスを時系列で表したものです。
例えば、「見込み客への、アプローチ→ヒアリング→提案→見積もりの
提示→受注」といった流れがパイプラインと呼ばれます。
● 自己実現
自己実現とは、目標達成や夢の実現、また理想を手に入れること」
巷では、そんな意味で使われている言葉です。
● 情報過多
情報オーバーロード(じょうほうオーバーロード、英: information
overload)とは、情報過多によって必要な情報が埋もれてしまい、
課題を理解したり意思決定したりすることが困難になる状態を指す。
情報洪水、多すぎる情報などともいう。
A lesson from P.F.Drucker
∵ グループではなくチームになる
果たすべき貢献を考えることによって、横へのコミュニケーションが可能と
なり、その結果チームワークが可能となる。自らの生み出すものが成果に
結びつくには、誰にそれを利用してもらうべきかとの問いが、命令系統の
上でも下でもない人たちの大切さを浮き彫りにする。
『経営者の条件』—p.94
チームワークに欠かせないのは、コミュニケーションというインフラです。
その中を流れる重要な情報は二種類あります。
第一に、自他の強みやワークスタイル、得意な分野、弱みや不得意分野
などが挙げられます。
ドラッカー教授は、信頼とは予見できることだといいます。
「この点はあの人からアドバイスをもらえるはずだ」という期待です。
こうして他人を知っていることで、自然発生的に役割分担が生まれます。
いちいち誰が何を知っているかを聞きながら仕事をしなくてもいい環境を
いかにつくるか。そこでは、各人の貢献の形が自ずと決まってくるのです。
第二に、共通のミッションと目標に関するものです。
果たすべき個々の貢献は、ミッションと目標の延長線上にあります。
自らの貢献を明確にするには、ミッションに関する共通の理解が不可欠です。
また、「何をいつまでに」という目標を共有できなければ、成果はあがり
ません。これらの情報がうまく流れると、個人の貢献が束となり、組織の
成果につながります。単に完結した個人が集まりグループの成果は足し算で
終わりますが、相互補完しあうチームの成果は掛け算になるのです。
● ミッション
ミッションには「目的、使命、存在意義、役割」という意味がありますが
経営ではその組織や個人が社会において果たすべき使命や任務のことを
いいます。2020/02/12
● 相互補完
お互いに足りないところや弱いところを補って、助け合うこと。
この続きは、次回に。