実践するドラッカー[思考編] ㉔
A lesson from P.F.Drucker
∵ 自分磨きの到達点を決める
組織に対する自らの貢献を問うことは、いかなる自己開発が必要か、
いかなる知識や技能を身につけるか、いかなる強みを仕事に適用するか、
いかなる基準をもって自らの基準とするかを考えることである。
『経営者の条件』—p.97
人の成長は、仕事とともにあります。趣味や娯楽が成長を促すことが
ほとんどないのは、なぜでしょうか。
それは趣味や娯楽のほとんどが自己完結する世界だからです。
仕事は、ほとんど自己完結することがありません。顧客が価値を見出して
くれなければ、何の成果にもなりませんし、成果を生み出すには、組織の
内部で貢献というバトンをうまくリレーしなければなりません。
仕事のリレーの途中には、他人からの評価という大きなハードルがあり
ます。ある基準をクリアしないと生き残れない、そんな厳しい環境を生き
抜くには、日々の鍛錬、自己開発が欠かせません。
「艱難辛苦が玉を磨く」と言いますが、困難に立ち向い、一つひとつ壁を
乗り越えるところに充実があります。自ら新たな基準を設け、本気で仕事に
取り組み、乗り越えたときに初めて見える世界があります。
仕事は、自分自身を成長させる最適な道具なのです。
● 自己完結
何かの物事について、自分自身の中だけで納得したり決着したりして
いるさま。「周りの人からするとまだ決着していないのに、独りよがりに
決着している」といった意味合いで否定的に用いられることもある。
● 艱難辛苦が玉を磨く(かんなんしんくがたまをすく)
人は困難に直面し、苦しみ悩みながら克服していくことでりっぱな
人間になっていく。
A lesson from P.F.Drucker
∵ 他人の自己開発を刺激する
貢献に焦点を合わせるならば、部下、同僚、上司を問わず、他の人の
自己開発を触発することにもなる。
属人的な基準ではなく、仕事のニーズに根ざした基準を設定することに
なる。すなわち卓越性の要求である。
『経営者の条件』—-p.97
到達する基準を低く定めるのも、高く定めるのも自分です。
成長の奇跡は、自ら設定した基準によって決まります。
ドラッカー教授は、「ゆっくり」と「低く」は違うと言います。
高い基準を目指してゆっくりでも少しずつ進むことが、結果として高み
へと導きます。「低い基準」を次々とクリアしても、たいした山は登れ
ません。
高い基準を満たすには、いま、組織やチームに対して自分がどんな貢献が
できるか、将来はどんな貢献を果たせるようになりたいかを問い続ける
ことです。欠けている部分がわからなければ、その差を埋めようにも、
埋まらないからです。
もちろん、自分だけでそのことに気づくのは難しいでしょう。
お互いに、なすべきことは何か、欠けているものは何かを指摘し合うことは、
人材開発の最大のポイントです。
人は、自分のためよりも、他の人のためのほうが、思いがけない力を発揮
できることがよくあります。誰かのために行うことは、巡り巡って自分の
ためでもあります。
実践シート⑪
あなたの組織が求められている、社会的役割は何ですか。
—-hint—-
● 組織は、顧客を通して社会と繋がっている(p.94)
実践シート⑫
あなたは組織において、どのような貢献を期待されていますか。
そのために必要なものは何ですか。
—-hint—-
● 組織の成果を確認し、その成果をあげるためになすべきこと、
役割を考える(p.112)
● 貢献の三分野(売上などの直接の成果、価値への取り組み、人材の
育成)を意識する(p.99)
実践シート⑬
貢献するために障害となっていることは何ですか。
—-hint—-
● なるべく具体的に考える。
期待に応えるには十分でない能力なども含む
● 属人的
個人に依拠していること。 「属人」はもともと法律用語。
● 卓越性
広辞苑によると、「”卓越“とは、他にぬきんでてすぐれていること。
ひいでること」とある。 つまり、”卓越性“とは、抜きんでた実力の
ことである。2013/11/05
この続きは、次回に。