実践するドラッカー[思考編] ㉛
A lesson from P.F.Drucker
∵ 時間とエネルギーの使い方
並の分野での能力の向上に無駄な時間を使うことをやめることである。
強みに集中すべきである。無能を並の水準にするためには、一流を超一流に
するよりも、はるかに多くのエネルギーを必要とする。
『明日を支配するもの』—p.199
「少ないインプットで最大のアウトプットを」が生産性の原則です。
インプットは資源、アウトプットは成果です。このことは自己開発にも
当てはまります。
個人の最大の資源である時間やエネルギーを、「何に」投下するかが重要です。
最高の投資効率は、得意分野や強みに資源を投下することで得られます。
並の分野に投資しても、たいしたものは得られません。
例えば、得意分野の知識や能力を深めることに投資すれば、未知の仕事が
できるようになります。つまり、どんな資源を貯めるかによって、成果の
大きさが変わるのです。成果をあげる人は、将来を見据えて知識や能力と
いう資源を集中して蓄積します。
自己開発にあたっては、常に投資が無駄になっていないか、注意しましょう。
並みの能力しか身につかないと判明したら、すぐさまその分野への投資を
やめ、卓越性を究められるものに絞るのです。
投資効率を上げるためにも、卓越性は具体的にイメージしましょう。
例えば、「英検一級を取得する」や「宇宙工学を究める」ではなく、
「宇宙工学の分野の講義をMIT(マサチューセッツ工科大学)で行えるだけの
専門性と語学力を身につける」といったように、よりパワフルに、より
鮮明に書き記すことがポイントです。
A lesson from P.F.Drucker
∵ 仕事の仕方
自らがどのような仕事を得意とするかは、とくに知識労働者にとっては、
強みと同じように重要な問題である。
実際には、強みよりも重要かもしれない。
ところが驚くほど多くの人たちが、仕事には、いろいろな仕方があること
さえ知らない。そのため得意でない仕方で仕事をし、当然成果は上がら
ないという状況に陥っている。
『明日を支配するもの』—-p.199
人にはそれぞれ、得意とする学び方があります。
情報を集めるのに「聞く」ほうが得意な人がいる一方、「読む」ほうが
得意な人がいます。情報を伝える際も、「話す」ほうが得意な人もいれば、
「書く」ほうがいいという人もいます。
組織にはさまざまなタイプが混在しており、その組み合わせによっては、
コミュニケーション・ギャップが生じます。
例えば、話すことが得意な上司と、読むことが得意な部下。
この場合、いくら上司が長々と話して聞かせたところで、部下はなかなか
意を汲み取ることができません。読んだあとなら理解も進むでしょうが、
その逆は難しいのです。
「読む」と「聞く」、両方できるのは、元アメリカ大統領フランクリン・
ローズヴェルトや元イギリス首相ウィンストン・チャーチルなど、ごく
限られた人だけだそうです。したがって、お互いの「仕事の仕方」(ワーク
スタイル)を知らなければ、相手を生かすことも、自分を生かすことも
できません。
ドラッカー教授は「書く」人でした。
そのスタイルをいち早く見抜いたのは、小学校時代のエルザ先生です。
すぐさまドラッカー少年に、一週間に二本作文を書くトレーニングを課し、
能力があるのに手を抜こうものなら、「復讐に燃える天使」となって厳しく
指導したそうです。
強みは資質に由来しますが、「仕事の仕方」は習慣の蓄積に由来します。
できるかぎり早く発見し、トリーニングによって習慣化することが大切です。
この続きは、次回に。