実践するドラッカー[思考編] ㊳
A lesson from P.F.Drucker
∵集中とは、勇気である。
集中とは、「真に意味あることは何か」「最も重要なことは何か」という
観点から時間と仕事について自ら意思決定をする勇気のことである。
この集中こそ、時間や仕事の従者となることなくそれらの主人となるための
唯一の方法である。
『経営者の条件』—-p.152
限りある資源を有効に使うポイントは、二つです。
第一に、捨てること。有限な資源を注ぎ込める一点を探し、他を切り捨てる。
集中とは、多くの可能性を捨てることでもあり、あえて他を選ばないと
いう勇気が必要とされます。
第二に、任せること。人に任せることを突き詰めていくと、最後は自分に
しかできない仕事が残ります。そこを究めることで、卓越性が生まれます。
卓越した仕事は、成果をより大きくします。人に任せる仕組みこそ、組織の
真の意味だといえます。
ところが、任せることに不安をもつ人がいます。
自分がやったほうが早い、正確だといった意識のままでは、成果を大きく
なりません。人に任せる勇気が必要です。
また、成果をあげるには、時間がかかります。当然、障害や失敗もあり、
要所要所でやり遂げる覚悟を問われます。
選んで一つに決めることは勇気そのものであり、その一つをやり続ける
ことは覚悟そのものです。その意味で、ビジネス界でよく目にする企業
経営の「選択と集中」とは、すなわち、勇気と覚悟の結晶なのです。
A lesson from P.F.Drucker
∵過去を廃棄し、燃料を確保する
集中のための第一原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。
『経営者の条件』—p.142
私たちがいま行っていることの大半は、過去の意思決定と行動に端を発して
います。今日のクレームは先週の販売活動から、新製品のリリースは半年前の
企画会議から生じたものです。非生産的な活動の多くもまた、過去からの
ものです。
「既存のものは古くなる」という鉄則に従えば、過去の意思決定と行動は、
いつかは廃棄の対象となるのです。必ずや、すべて捨てなければならない
ときが来ます。その際、何から捨てていくか。一般的には、生産的でなく
なったものから、ということになります。
さすがに生産性がゼロのものが残っていることはないので、相対的に見て
下位のものを切り捨て、上位のものに集中するということになります。
人が一日に使える時間は、たかだか一四〜一六時間です。しかも、その
全部を自由に使えるとはかぎりません。何かを捨てなければ、時間を確保
することはできないのです。
時間を確保するための方法は、前出のように「捨てること」と「任せる
こと」 です。
成果をあげる人は、常日頃、時間を確保しようと意識しています。
過去にとらわれることなく、未来に目を向けさせるために不可欠なのです。
この続きは、次回に。