実践するドラッカー[思考編] ㊴
A lesson from P.F.Drucker
∵未来のためにスペースを空ける
成果をあげる者は、新しい活動を始める前に必ず古い活動を捨てる。
『経営者の条件』—p.145
「古い皮袋に新しいぶどう酒を入れてはならない」という古いことわざが
あります。新しい活動をするときには、新たな時間を確保することが
大切です。
新しい活動というものは、とかく予想外の困難に直面するものです。
時間が足りないという理由で機会を逃すことほど、ばかげたことはあり
ません。
とりわけ新しい価値をつくろう、イノベーションを起こそうとするならば、
さらに徹底して過去を廃棄しなければなりません。
いまの仕事を全面的に捨てる勇気が必要です。必ず成功させるという信念を
もって、何もかも捨てて全身全霊で打ち込む覚悟が必要です。
組織の中に、そんな人間が一人くらいいなければ、イノベーションは成功
しません。
過去の仕事を捨てる、成功体験を捨てる、常識を捨てる。
あるいは人に任せて時間を確保し、新しい活動に取り組む。
そこに新たな道が拓けます。
A lesson from P.F.Drucker
∵目指す成果を一つに絞る
成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一時に一つのことしか
しない。
『経営者の条件』—-p.138
体は一つ、時間は二四時間。同じ条件でも成果に差が出るのは、重要な
ことは何かを決める能力の違いによります。
人は思ったことだけを行動に移すことができます。つまり、何を思うかに
よって行動が決まります。成果をあげる人は、いま一番重要なことを一つ
だけ決め、それに行動を集中させます。
ですから、真に取り組むべき価値あることを選ぶことに、しっかり時間を
かける必要があります。妥協して、あるいは中途半端に決めて、間違った
方向に走り出すことは避けなければなりません。
そして、いったん決めたら、時間と労力を集中投下して進むことです。
目標地点にたどり着くには、時間がかかるものです。途中には、障害も
失敗も多々あります。先が見えなくなって不安になったり、自信が無く
なったりすることもあるでしょう。
そんなとき、空の器に水が溜まっていく様子をイメージしてください。
器から水があふれ出るのは先の話かもしれませんが、少しずつ確実に、
間違いなく、水面は上昇しているのです。
目指すべき成果が正しく絞り込まれていれば、焦る必要はありません。
思い続け、行動し続けるのみです。
コラム 巨人たちの集中力
集中すべきところを一つに絞ることは、なかなか難しいですが、原則と
しては、自らの強みや能力、卓越する可能性のあるところを選ぶべきです。
それでは、一点に集中することで、どれだけのインパクトが出るのでしょうか。
アインシュタインとエジソン、二人の巨人の逸話を見ながら、集中力の
威力を考えてみましょう。
—-アインシュタインの集中力
干草の中から針を探せといわれた場合、みなさんならどうしますか。
アインシュタインは、普通の人と自分の違いを表すエピソードとして、
このように答えました。
「たいていの人は、針が一本見つかるまで探し続けるでしょう。
しかし私は、針が全部見つかるまで干草の山の中を探し続けるのです」
—-エジソンの集中力
朝起きて夜眠るまでの間、みなさんはどう過ごしているでしょうか。
多くの人は、仕事や雑事などさまざまな用事をこなしますが、エジソンは
たっぷり一つの仕事に、全神経を注ぐのだそうです。
集中する力は、成果をあげるうえで最も重要な能力であり、また、集中し
続けていくことが大きな成果につながる道なのです。
この続きは、次回に。