実践するドラッカー[思考編] ㊵
A lesson from P.F.Drucker
∵優先順位の原則
優先順位の決定には、いくつか重要な原則がある。
すべて分析ではなく勇気に関わるものである。
第一に、過去ではなく未来を選ぶ。
第二に、問題ではなく機会に焦点を合わせる。
第三に、横並びではなく独自性をもつ。
第四に、無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選ぶ。
『経営者の条件』—-p.151
「緊急ではないが重要なこと」と「重要ではないが緊急なこと」、どちらに
多くの時間を費やしていますか。
成果をあげる人は、意識して「緊急ではないが重要なこと」に優先順位を
与えています。では、何をもって「重要なこと」というのでしょうか。
私たちは、優先順位という言葉を曖昧に使っているようです。
何を基準としているのかが、実は明確ではないのです。
ドラッカー教授は、この点にもしっかりとメスを入れています。
優先順位は、「過去ではなく未来」「問題ではなく機会」「横並びでは
なく独自性」「無難で容易なものではなく変革」、さらには「内部では
なく外部」であり、これらを選択することは勇気がいると教授はいいます。
過去、あるいは問題については、すでに事柄や事象が起きているため、
分析が可能です。
現在については、例えば同業他社を参考にすることもできます。
しかし、未来や機会を分析することはできません。
独自性もまた、他に類例がないため、分析には馴染みません。
すなわち、未知なるものへの挑戦なのです。
そこには勇気が欠かせません。
A lesson from P.F.Drucker
∵列後順位の原則
本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。
優先順位の決定は比較的容易である。
集中できる者があまりに少ないのは、劣後順位の決定、すなわち取り組む
べきでない仕事の決定とその決定の遵守が至難だからである。
『経営者の条件』—–p.149
劣後順位の決定は、手がけてはいけないものを、予め決めておくことを
意味します。できれば、リスト化しておきましょう。
劣後順位の決定には、二つの基準が必要です。
一つは、現在行っている仕事の劣後順位です。
現在行っている仕事の棚卸しを行い、生産性が低いものを洗い出し、
「廃棄リスト」をつくります。
折に触れてリストを確かめ、常に廃棄のチャンスを狙います。
例えば、五年前から行っている定型業務でそろそろ誰かに任せられそうな
もの、目的が形骸化してきた会議などがリストに挙がることでしょう。
もう一つは、新たに始めようとする仕事の中にある劣後順位です。
まだ行動を起こしていないので、生産性の観点からは判断できません。
こちらは、過去にとらわれていないか、横並びで安易な道を選んでいないか、
という観点から判断します。
例えば、過去に人に任せた仕事に似たもの、自らの強みが生かせない仕事
などがリストに入るでしょう。
劣後順位は、優先順位同様、状況によって変化します。
定期的に見直す習慣をつけましょう。
この続きは、次回に。