Coffee Blake-令和3年10月12日(火)「高齢者雇用」
私も〝高齢者〟に該当致しますので、他人事ではありません。
高齢者雇用については、いろいろな概念があります。
私が思うのは、〝働けるうちは、働いたほうが良い〟という考え方です。
それも〝自分で判断する〟ことが大事であると思います。
また、仕事の成果を〝単に年齢で、判断して欲しくない〟という考えも
あります。
以前、アルバイトしていた小売業-スーパーで昇給制度がありました。
昇給制度に興味があり、働き始めたのですが、〝仕事の熟練度〟で時給が
上がりました。しかし、再度、昇給を見込んでいたのですが、満65歳に
なった時点で、昇給分がカットされるとの事でした(雇用開始時の時給に
戻る)。一旦、契約更新にて働きましたが、仕事内容等は何ら変わりが
なく、〝これ以上、働く理由もない〟ということで、退職を致しました。
私は、〝仕事の評価が高い高齢者〟を単に〝規定の年齢に達した〟と
いう理由で、働く意欲を低下させることは、避けべきだと思います。
〝仕事は、成果で評価・判断する〟
若年者でも、高齢者でも、〝仕事のできる人、出来ない人〟は、いるの
ですから。
2021.10.12
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美
Analysis
高齢者雇用 どう進めるか/上
八代尚弘昭和女子大学副学長
40歳代からの働き方改革を
ポイント
● 定年制は雇用と年功賃金解消する仕組み
● 同一賃金と解雇の金銭解決ルールが重要
● 自ら職種選び技能蓄積しキャリア形成を
日本の20〜64歳人口は、2000年のピーク時からの20年間で約1千万人
減少した。一方、この間に65〜74歳人口は約450万人増えている。
この年齢層が労働市場で活用されれば、人手不足の改善だけでなく、年金
給付の節約や高齢者の健康維持など幅広い効果がある。
これを妨げている大きな要因が他の先進国では原則禁止の定年退職制だ。
定年制の本質は、個人の仕事能力に大きなばらつきがある高齢労働者を
一律に解雇する「年齢による差別」だ。雇用契約で個人の仕事の範囲が
明確に定められる欧米方式では、その契約条件を満たす社員を、年齢だけを
理由に解雇できない。
これが日本で容認されるのは、雇用と年功賃金が保障される下で、どの
ような業務でも無限定に担う正規社員という「身分」が、定年年齢で失効
するためだ。
未熟練の新卒者に多様な仕事を経験させて育てる日本の働き方では、
個々の仕事能力についての評価が乏しい。
代わりに年齢という客観的基準で、包括的な雇用契約を打ち切る「形式的
平等性」が尊重されてきた。
政府は、定年制は維持したまま、65歳までの雇用を企業に義務付ける
高年齢者雇用安定法を改正し、さらに70歳まで努力義務として延長した。
だが定年後の再雇用は1年間の雇用契約を更新することが多く、能力が
高くても企業内で責任あるポストに就くことは困難だ。
その反面、賃金が抑制されても雇用は守られるため、定年を契機に企業外で
活躍する機会費用を高める「飼い殺し効果」もある。
日本企業にとって現行の仕組みのままでの定年制廃止は困難だ。
定年制をなくすには、40歳代から社員の多様な能力を自発的に生かす
キャリアを形成し、高齢者の雇用がコスト高にならない仕組みに変え
る必要がある。それを支援する政府の役割が同一労働同一賃金原則と
解雇の金銭解決ルールの制定だ。
この働き方改革は安倍政権では腰砕けになり、旧来の雇用慣行を正当化
するだけに終わった。
なぜ日本企業は、元気で働ける60歳代の社員に一律に定年退職を強いる
のか。
その要因としてエドワード・ラジア米スタンフォード大教授が指摘した
勤続年数に比例した賃金増がある。企業内訓練を受けた社員の自発的な
退職を防ぐため、若年期の低賃金を高年齢期の高賃金で補償する仕組み
だが、どこかで清算されねばならない。これをできるだけ早い時期にする
ため、60歳未満の定年を禁止する高年齢者雇用安定法の基準年齢に集中
している。
少子高齢化社会では年功賃金の維持は困難だ。過去20年間に40歳以上の
年功賃金カープのフラット化は、最も賃金の高い大企業男性で顕著となって
いる(図参照)。
現行の男女間や企業規模間、および正規・非正規間の賃金格差は、主と
して年功賃金カーブの違いによるもので、その傾きが緩やかになれば賃金
格差も縮小する。こうした企業の賃金体系の変化を促すための政策が、
本来の同一労働同一賃金制だったはずだ。
今後のフルタイムで働く女性が当たり前の社会で、夫婦双方が生活給を
受け取る共働き世帯が増えれば世帯間の格差が拡大する。
夫婦が共に働き家事・子育てを担う世帯を標準とした賃金や所得税制への
移行が不可避だ。だが正規社員の年功賃金を維持したままで、非正規社員
との格差をなくすという非現実的な論理に妥協したのが、20年の同一労働
同一賃金法制だった。
勤続年数が等しい労働者間で働き方の違いによる賃金格差を禁止する
ガイドラインは、正規社員と同じ勤続年数の非正規社員がほとんどいない
以上、現状の年功賃金制を正当化するだけで改革の名に値しない。
これを米国のように、同一職種の社員間に賃金差があるときに、それが
差別でないことの説明責任を企業に課す。そうすれば慣習的な年功賃金の
維持は困難になり、定年制も不要となる。
企業組織が拡大し続けた過去の高成長期に、新しい業務が次々と生まれる
状況下では、欧米型の個人の仕事範囲を厳格に決めることは効率的では
なかった。企業の成長部門で費用とされる多様な業務に積極的に挑戦する
ことが、個人の能力向上や昇進の原動力となり、企業活力の源となった。
半面、個人の職種が明確でなければ、他の社員にフリーライド(ただ乗り)
する社員も生じる。こうした社員を、円満に解雇できる数少ない機会が
定年制だ。
一方、他の先進国では解雇が必要な場合、金銭補償の基準が示されている。
こうした基準作成には「カネさえ払えば解雇が容易になる」との反対が
あるが、一部の問題のある社員保護のため、全員が60歳などで解雇される
という現実をどう考えるのだろうか。
日本でも解雇に関する個別紛争を扱う労働審判などでは、金銭補償の金額が
争われる点で欧米と同じだ。それが民事裁判になると、解雇無効社員への
救済手段が職場復帰しかないことがシステム上の欠陥となる。
多くの場合、和解金という金銭補償で解決されるが、その水準に法的な
基準がなく青天井となる。これは裁判に訴える余裕がなく、十分なカネも
払われず解雇される中小企業の労働者との格差を生む要因となる。
この状況を改善するため欧州のように勤続年数などを基準とした解雇
補償金の水準を公的に定めれば、それを基準に裁判官が個々の事情に
即して増減できる。また、中小企業の労働者にも、法制化による補償
金額の向上が期待できる。
日本企業は新規一括採用などの雇用慣行の下で、若年労働者のスキル形成の
ために長期間の訓練投資を行なってきた。だが今後の低成長期に、60歳まで
訓練を続けるのは過剰投資だ。少なくとも40歳代からは一般の社員は自ら
選んだ専門的職種に専念する。その生産性と賃金が見合う限り、企業に
とって定年退職を求める理由はなくなる。
他方、今後の管理職を含むタレント社員には、より無限定な働き方が要求
される。一般社員の仕事範囲が限定されれば、緊急な仕事への対応を誰かに
押し付けられない。管理職が自ら対応せざるを得ないため、それに見合った
高い仕事能力が必要だ。将来、経営を担うタレント社員には、年齢にかか
わらず昇進か退職かの二者択一が迫られる。
大卒社員なら、誰でも職種や地域を問わず無限定に働く代わりに、定年
までの雇用と年功賃金が保障される。この働き方は、過去の高い経済成長と
人口構造の下で適した慣行だった。
それが維持できなくなった以上、単に定年後の雇用対策でなく、少なくとも
40歳代からの現役の働き方改革が求められる。タレント社員を目指すか、
専門職にとどまるか、どの職種の技能蓄積か、などの企業内でのキャリア
形成は人事部任せでなく、自ら選択できる。
そうすれば日本の雇用慣行を維持しつつ定年制を廃止し、高齢者をその
多様な能力に応じて活用できる。企業による強制ではなく、自ら望む時期に
退職することが、高齢化社会での望ましい働き方になる。
● 包括的
「包括的」とは「全てをひっくるめている様子」を意味する言葉です。
2019/10/18
● 顕著
際立って目につくさま。だれの目にも明らかなほどはっきりあらわれて
いるさま。「顕著な業績」「徴候が顕著に現れる」
● 不可避
避けようがないこと。また、そのさま。「国交断絶は不可避だ」
● フリーライド(free ride)
1. 他社が築き上げた信用と名声に便乗して利益を得ようとする行為。
有名ブランド名をまねた店舗名をつけるなど。
2. 利益は享受するが、そのために必要な費用は出さないこと。
● 民事裁判
民事裁判とは、私人間の法的な争い(紛争)を、裁判官の判決によって
解決するための手続きです。
民事裁判は、訴えを提起する「原告」と、訴えを起こされた「被告」の
両当事者によって争われます。 原告が訴えの内容を記載した「訴状」を
裁判所に提出することで手続きが始まり、訴状に不備がなければ、被告が
呼び出され、裁判が始まります。2021/02/01
● 青天井
1. 青い空を天井に見立てた語。
2. 取引で、相場の上限のないこと。
● タレント社員
人事ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。
近ごろ、外部主催のセミナーの講演に限らず、雑誌やネット、テレビなどの
マスメディアによく登場する社員がいる。
プレゼンテーションがうまく、語り口も軽妙かつルックスも良く、聴衆を
惹きつける魅力を備えたビジネスタレントと言っていい存在になっている
人もいる。2017/10/10
いかがでしたでしょうか。
この記事には、「企業規模別にみた年功賃金カーブの変化」(男性、
年収ベース)の図が掲載されております。
(出所)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
大企業(2020年)と小企業(2020年)で、年齢54歳で比較すると約400万円
差が生じております。この差をどう感じるか、という事です。
年齢65歳〜69歳で比較すると、そう大差はありません。
これからの世代の方々には、大変、参考になる記事だと思いました。
2021.10.12
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美