Coffee Blake-令和3年10月24日(日)「衆院選21」①
衆院選21
賃金上昇 実感できず 過去30年
わずか4% 雇用優先
国民負担率 過去最大
19日公示された衆院選では、岸田内閣が打ち出した「成長と分配の好循環」が
経済政策の重要な論点になっている。
30年にわたって上昇しない賃金は、日本経済にとって大きな課題だ。
●「官製春闘」
第2次安倍内閣が「アベノミクス」を始めてから、政府が賃上げの旗を
振る「官製春闘」は常態化した。本来、民間企業が決める賃上げを政府の
上昇を狙った。賃金が上がれば、消費も増えて景気は好転する。
2020年までの7年間に毎年、2%以上の賃上げを実現した。
ただ、欧米各国に比べると、日本の賃上げは力強さに欠ける。
経済協力開発機構(OECD)がまとめた平均賃金のデータによると、各国の
物価水準を勘案して調整した「購買力平価」ベースでは、20年の日本は
3.3万ドル(約440万円)。30年前に比べると、わずか4%増にすぎない。
この間に米国の賃金は48%、英国も44%増えた。
30年前に日本よりも低かった韓国には追い抜かれた。
企業の業績は好調で、利益の蓄積である内部留保は積み上がり、20年度末は
484兆円と9年連続で過去最高だった。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「日本
企業のもうけは海外進出で増えたが、低成長の国内への還元は小さかった」と
指摘する。企業が賃金アップよりも、非正規社員の拡大を優先したことも
影響したとされる。
賃金水準が比較的高い業種で働く人が増えていないことも一因となっている。
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、平均よりも賃金が高い金融・
保険業や製造業では、20年度の労働者数は10年前からほぼ横ばいだ。
比較的賃金が低い宿泊・飲食サービス業や卸売・小売業は、1〜3割増えて
いる。
■ 46%
賃金が伸び悩む一方、国民の負担は増えている。所得の中から、税金や
社会保険料をどれだけ払っているかを示す20年度の「国民負担率」は
46.1%に上り、過去最大の更新が見込まれる。
手取り収入にあたる可処分所得は増えていない。
コロナ禍の20年度は1人10万円の定額給付金で、前年度比3.2%増となったが、
16〜19年度はほぼ横ばいだった。こうしたことから、国民がアベノミクスの
経済成長の恩恵を感じづらいとされる。
衆院選で各党が格差是正を公約に掲げるが、日本は欧米ほど富の偏在は
大きくない。
OECDのデータでは、上位1%の富裕層が所有する資産が米国では4割を
占めるのに対し、日本は1割にとどまる。総務省によると、所得格差を
示す日本の「ジニ係数」も、リーマン・ショック後の09年をピークに減少
傾向にある。女性や高齢者の社会参画が進んだ。
■ 現金給付
衆院選では、各党がコロナ禍で家計が打撃を受けたとして現金給付を掲げる。
一時的なものでは、平均年収の押し上げにはつながらない。
飲食店や宿泊業など、収入が激変している人がいるのに対し、売り上げを
増やしている業種もある。
賃上げを持続させるには、成長が見込まれる産業で働く人を増やす必要がある。
付加価値の高い仕事をした労働者がしっかりと対価を受け取り、賃金が
増えていくことが大切だ。
大和総研の神田慶司シニアエコノミストは「企業が賃金を上げる環境を
整えるには、デジタル化を始め、生産性の向上につながるような政策が
欠かせない」と指摘する。
「成長あって分配できる」
日商会頭 論戦に期待感
日本商工会議所の三村明夫会頭は19日の記者会見で、「分配が(衆院選)
大きな議題になっているが、成長があって分配できる」と述べ、成長戦略の
論戦が進ことに期待を示した。
賃上げについては「企業の付加価値を増やさないと、なかなか難しい」と話し、
生産性向上につながる政策や、大企業と中小企業の取引価格の適正化が
必要とした。また、「コロナ禍で明らかになった課題を解決しながら、
成長を続ける二正面作戦でいくべきだ」と述べ、エネルギー政策や財政
健全化といった中長期的な課題も論点に挙げた。
● 過去30年日本の平均賃金はほとんど伸びていない
米国 約7.0万ドル
英国 約4.8万ドル
韓国 約4.2万ドル
日本 約3.9万ドル
※ OECDのデータから。購買力平均実質ベース
● 所得の高い業種で雇用が伸び悩んでいる
情報通信業(49万円) 高 い
金融・保険業(48万円) ↑
製造業(38万円) 賃 金
医療・福祉(30万円) ↓
卸売・小売業(28万円) 低 い
宿泊・飲食サービス業(12万円)
※ 毎月勤労統計調査から。金額は2020年度の月間現金給与額
10月31日は、衆院選の投票日となります。
選挙が始まると、このような記事が多くなります。
しかし、〝公約〟の成果はどうでしょうか。
私たち国民は、この〝公約の成果〟を的確に判断すべきではないかと
思います。
次世代が、暮らしやすい、働きやすい、そして、生きやすい、国になり
ますように、今、考える時期だと思います。
大事な1票を、是非、投票して下さい。
2021.10.24
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美