お問い合せ

実践するドラッカー[行動編] ㉛

A lesson from P.F.Drucker

 

∵組織は絶好の学びの場

 

組織社会において、人は自らの組織を自らの目的、価値、欲求に役立た

せるために体系的な情報を入れようとする。(中略)

人生から何を得るかを問い、得られるものは自らが投じたものによる

ことを知ったとき、人は人として成熟する。

組織から何を得るかを問い、得られるものは自らが投じたものによる

ことを知ったとき、人は人として自由になる。

『断絶の時代』—p.268


 

組織の目的は、第一に社会の役に立つ製品やサービスを供給することで

あり、第二に個人一人ひとりの成長と自己実現の機会を提供することです。

組織は、学びの場です。活用するかしないかは一人ひとりの自由ですが、

活用の仕方を研究し、よく活用するものには多くの実りがもたらされます。

自分の成長を考えずにただ組織にいれば、誰かの指示に従って動くだけの

存在、利用されるだけの存在になるということです。

一方で、自分の成長ばかりを考えていては、組織に貢献できず、したがって

成果も出せないでしょう。

社会、個人、組織の三方がよくあるために、責任をもって組織を利用する

ことが、私たちの務めです。

 

コラム 三方がよくあるために

 

「何千人もの人を解雇しつつ巨額の報酬を懐に入れることは、倫理的にも

社会的にも許されることではない」

晩年のドラッカー教授は、利益に目がくらみ、株価に気をとられ、使命を

忘れ、CEOの名を汚す者が出始めたことに非常に心を痛めていました。

企業とは利益の道具ではなく、社会に貢献するコミュニティでなければ

ならないからです。

倫理を追求しても組織が存続できなければ意味がないという議論もある

かもしれません。しかし、そもそも倫理なき組織は存在価値がありません。

しかも、人を大事にすることは組織の成長につながるのです。

アメリカのアルミニウム企業アルコアのポール・オニールCEOは、ドラ

ッカー教授の教えを受け、世界初の労災ゼロの会社を目指しました。

すでに同社の労災発生率は全米平均の三分の一という水準だったにも

かかわらず、ドラッカー教授のいう「人を大切にする」ことを実践する

には、それでは足りないと痛感したからだそうです。

初めのうちはなかなか理解を得られませんでしたが、〝完全な安全〟を

求めることが、人と人の絆を強くし、絶えざる改善をもたらしました。

実際、オニールがCEOを務めた一九八七年から二○○○年の間に、収益は

五倍以上、生産性は三倍以上の伸びを記録し、名実ともに世界最大の

アルミニウム企業に成長しています。

また、ユニクロを展開するファーストリテイリングも、「よい企業」で

あることを追求し、CSR(企業の社会的責任)活動に積極的に取り組んで

います。社会に貢献できない企業は存在意義がないというドラッカー教授の

考えに強く共鳴しているからであり、また、社会で認められる企業には、

よい人材、優秀な知識労働者が集まるからです。

組織で働く私たちも同様です。よき個人として、よき組織に貢献することで、

よき社会の実現の一翼を担う。文明の進歩とは、生きとし生ける者の幸せを

伴うものでなければならないのです。

 

 

 

この続きは、次回に。

トップへ戻る