「人を動かす人」になれ! ⑦
9. 目先の楽をとれば大きなチャンスを逃してしまう
● 人生というのは運が七分で努力が三分、いや、もっと運に大きく左右
されるかもしれない。いくら努力しても、それ以前に歩む道に選択を
誤っていたり、運に見放されてしまっていてはせっかくの努力も水の
泡になってしまう。
● 水の泡
努力・苦心がすべてむだになること。「苦労のかいもなく―となる」
● わたしは「運」の活かし方には公式があると思っている。
その代表的なものが本書で繰り返し述べていこうと思う「先憂後楽」の
精神だ。目の前にいくつも仕事が山積みになっている。
できれば明日に回してしまいたい。そこで、楽を取ればやはり大きな
チャンスを逃してしまうことになるだろう。わたしは、社員や部下は
もちろん、縁があって出会ったすべての人、企業から、「永守と知り
合えてよかった」「日本電産と関係ができて運が向いてきた」と喜んで
もらえるような人間になりたい、会社にしていきたい、と考えている。
そのためには、わたし自身が「運」をフルに活かさなければならないと
思っている。
● 先憂後楽
《范仲淹「岳陽楼記」の「天下の憂えに先んじて憂え、天下の楽しみに
後おくれて楽しむ」から》国家の安危については人より先に心配し、
楽しむのは人より遅れて楽しむこと。志士や仁者など、りっぱな人の
国家に対する心がけを述べた語。
● 安危
安全であるか危険であるかということ。「一国の―にかかわる重大事」
● 志士
高い志を持った人。国家・社会のために献身しようとする人。
「勤王の―」
● 仁者
1. 情け深い人。
2. 儒教の説く仁徳を備えた人。仁人。
10. 周囲に反対されるほどのことを実現させて、はじめて人がついてくる
● 短期的には二○○一年にニューヨークでの株式上場、中期的には創業
三○周年を迎える二○○三年にグループ全体の売上高五○○○億円、連結で
三○○○億円。そして長期的には、二○一○年にグループ売上高一兆円、
従業員数一○万人のモータを中心として、回るもの、動くものの世界
最大のハイテク総合メーカーをめざす。
これがわが社の将来構想である。ちなみに、九七年度のわが社のグループ
売上高は二三五○億円、従業員数は二万七○○○名。
したがって、これからの一三年間で現在のざっと四倍まで規模を拡大
しようと考えている。
「なぜそんなに企業をどんどん大きくしたいのか」と経営者仲間から
よく質問を受ける。こんなとき、わたしは即座に「雇用創出のため」と
答える。なぜなら、人間を中心とした社会にあった、人が多く集まる
集団をつくること、それも目的を同じくする人の集まりを大きくし、
一人でも多くの人が働ける会社をつくることが、経営者の永遠のテーマ
だと考えているからだ。しかし、「現在では社員数の多いことが、必ず
しも成功した効率の良い企業の条件ではない」「会社が大きくなれば
大きくなるほど、煩わしいことも増えるのでは」という意見もある。
たしかに、効率を徹底的に追求し、ムダやムラを排除していくことは
経営には不可欠なポイントだ。だが、こと人に関するかぎり、効率一辺倒
だけでとらえてよいものだろうか。
国内だけを見れば、そうした意見も止むを得ない面もあるが、広く世界に
目を向けると、ただただ効率重視だけではなく、雇用そのものをつくり
出していかねばならない国や地域も、まだたくさん残されている。
この続きは、次回に。