「人を動かす人」になれ! ⑩
13.「いわなくてもわかっているだろう」という態度をするな
世の中で男性を一番冷ややかに見ているのは、その男の嫁さんであろう。
新婚時代は例外としても、結婚して五年、十年と経つとお互いに隠して
いるものもなくなってくる。
このころになると、嫁さんの口をついて出てくる一言にハッとさせられる
ことがある。また、亭主の長所はこことここ、欠点もいろいろとあるが、
これだけは許しがたい、といったことも明確になってくる。
普段は表面にはなかなかあらわれてこないが、何かのはずみで表面化した
ときには、ズバリ核心を突かれてドキッとさせられることも少なくない。
一方、そこまで細かく嫁さんのことを分析している男も少ない。
冷ややかという言葉を使ったが、あくまでもその根底には愛情や信頼関係が
あるのが前提で、別の表現をすると、「心はホットでも、頭はクールに」
ということになる。では二番目に男を冷ややかに見つめているのは誰かと
いうと、それが部下である。上司としての器があるか、つまり、専門知識、
専門技術をはじめ、判断力や決断力があるかどうか、また使命感や責任感は
強いかなどの管理者としての資質、さらには情の厚さや細やかさといった
人間性、そして問題が起こったときに庇ってくれるかどうかといった度量の
大きさ、自分たちの意見を積極的に取り上げてくれる姿勢の有無にいたる
まで、口にこそ出さないが部下は実に細かなところまで冷静に観察して
いるものである。
嫁さんと部下。この両者は頭のクールさでは共通していても、心のホット
さはまるで違う。夫婦であれば、互いに愛情や信頼関係を育んでいこうと
いう前提に立てるが、上司と部下の場合はこうはなりにくい要素が多々
ある。だからこそ、上司は部下の心をホットにするために最大限の努力を
惜しんではならない。
そのポイントになるのが、部下とのコミュニケーションのとり方だ。
人の信頼を得ようと思えば、相手に不安を与えないようにしなければなら
ない。そのためには、上司の方から小まめに話しかけること。
部下の立場になれば、上司がムスッとしているだけでも不安になるものだ。
とにかく「いわなくてもわかっているだろう」という態度が一番よくない。
もう一つは、上司は聞き上手になること。
部下が話しかけてきたら、相づちを打ち、話しやすいように質問をする
など、親身になって最後まで話を聞いてやることが重要だ。
言葉を変えると、部下の描いたドラマのなかに飛び込んで、一緒にドラマを
演じる。そしてともに感動する。
この感動が部下との強い信頼関係を築き上げていく原動力になるのである。
この続きは、次回に。