「人を動かす人」になれ! ⑱
21.大勢の部下を前に話すときは、テーマを一つか二つに絞り込め
世の中には、大勢の人の前で話をするのが実に上手な人がいる。
ここでいう話上手とは、聞き手の心を動かす話し方の人であって、決して
言葉巧みにしゃべることではない。
もう少しわかりやすく説明すると、言葉巧みにしゃべる人とは、その人の
話を聞いていると、あっという間に一時間、二時間が過ぎてしまう。
しかし、後で振り返ったときに「あんな話もあったし、こんな話もあったが、
いったいあの人がいいたかったことは何だったのか」と思わせるような
話し手のことだ。この代表がテレビのバラエティー番組などによく登場
してくる人気タレントたちだ。彼らは、次から次へと話題を変え、実に
テンポよくしゃべりまくるので、つい聞き惚れてしまうことも多いが、
聞く側は五分前の話の内容すら覚えていないということがよくある。
こういう人たちは、しゃべり上手ではあっても話上手ではない。
話し上手な人に共通しているのは、一時間の話のなかにいいたいことは
一つ、あるいはせいぜい二つぐらいまでに絞り込んでいることだ。
大勢の社員の前で話をする機会の多い経営幹部、とりわけ経営者はこの
原則を頭に入れておくことが大切である。一○人程度の少人数でも基本
的な考え方は同じで、これまでのわたしの経験を総合すると、役員会では
一五分に一つ、管理者、リーダークラスでも三○分に一つぐらいのテーマで
話をしなければ、結局は焦点がぼやけて、ムダ話になってしまう結果となる。
先日、わたしは関係会社で三○○名ほどの現場の人を集めて話をしたが、
その時の内容は、仕入れコストを二○パーセントダウンさせることだった。
「今日、皆さんにお願いに来たのは仕入コストを二○パーセント削減して
もらうためです」からはじめて約一時間、その間にいろんな具体的な事例を
あげて、仕入価格を下げるにはこんな方法があるし、こんなやり方もあると
いった話をする。さらになぜコストダウンが必要なのか、達成した評価は
どうするのかなどの話も交えて「二○パーセントの仕入価格低減」を訴える。
そして、最後にもう一度「忙しいなか、わざわざ皆さんに集まってもらい、
一時間聞いた話が二○パーセントのコストダウンだけかと思われるかも
知れませんが、その通りです。くれぐれも必達をお願いします」と念を
押す。
頭で覚えたことはすぐに忘れてしまうが、体で覚えたことはなかなか忘れ
ない。大勢の社員に体で覚えてもらうには、ここまでやらなければなら
ないことを肝に銘じてほしい。
この続きは、次回に。