「人を動かす人」になれ! ㉑
24.会議だけでは現場や人は動かない
組織が急速に大きくなると、随所で様々な問題が噴出してくる。
バブルの時代には、土地や株などの価格が急騰したために企業や個人の
資産が膨らみ、多くの日本人は実際に現金を手にしたわけではないのに、
みんながお金持ちになったような気分になっていた。
組織も急成長するとこれとよく似た現象が起こってくる。
本人の実力や能力は少しも向上していないのに、肩書だけが立派になり、
あたかも偉くなったかのような錯覚に陥ってしまう。
こうした弊害の筆頭が、会議の回数ばかりが増えてくるということだ。
要するに、いろんな物事を会議で決めて、これだけで人を動かして行こうと
する傾向が強くなってくる。しかし、メーカーにとってはこれが致命傷に
なってしまうことがある。
わたしは会社の利益を生み出すのは製造部門、会社の将来を決定づける
のが技術開発部門だと考えている。すなわち、メーカーにとって会社の
命運を決めるのがこの二つの部門だ。
この現場を無視して、会議だけで現場や人を動かそうというのは犯罪行為
にも等しい。こうした姿勢は徹底して排除していかねばならない。
会議をする時間があるなら、一度でも多く現場に足を運び、現物を見て、
現物に触れて、現場で判断する。この基本を忘れたメーカーに未来はない。
組織が急成長した結果、招きやすいもう一つの弊害が、安易な外注に
頼りがちになるということである。設備投資を行って、工場やラインを
自前でつくる。そして社内で研究開発、設計を行って、製品をつくる。
同時に品質管理、品質保証の思想を確率して実践していく。
これがメーカー本来のあるべき姿である。にもかかわらず、組織が大きく
なると、この部分で手を抜いてしまいがちになる。その大きな理由は、
まず設備投資をするよりも外部に依頼した方が安上がりにできるという
こと。さらに人も少なくて済むし、何よりも管理がしやすいのである。
しかし、こうした考えを持てば社外に自社のノウハウが流出し、メーカー
としての手足をもぎ取られたも同然の状態になってしまう。
「現場・現物主義に徹し、モノづくりのすべてを自前でやっていく」と
いうのは、わたしの揺らぐことのない信念である。
日ごろから、このことは幹部社員の耳にタコができるくらい繰り返し訴え
続けている。
この続きは、次回に。