「人を動かす人」になれ! ㉜
35.手紙やファックスで人間的な絆を深める
いまや携帯電話はビジネスマンだけでなく、若者の必須アイテムとなって
いる。街なかでも、電車のなかでも、公衆電話の横でも携帯電話に向かって
話しかけている。
このような電話人間であるはずの若い世代に、ことビジネスになると
うまく電話が使えないというおかしな現象が起こっている。
電話が使えないといったが、正確ないい方をすると、相手に自分の意思が
正しく伝えられないということだ。
極端な例では、電話で一五分、二○分としゃべっておきながら、最後には
「これから伺います」といって受話器を置くといったこともあるようだ。
経営者の立場になると、こんなことも笑い話では済ませられない。
こうした結果になると原因は、大きく二つある。
ひとつは、事前の準備ができていないということ。
電話があまりにも身近な道具になりすぎたため、何も考えずにいきなり
電話をかけはじめてしまう。これでは、うまく電話が使えるはずがない。
たとえば、「わたしはスピーチが苦手で」という人がいる。
謙遜ではなく実際にスピーチの下手な人というのは、たいてい練習をして
いない。電話も同じで、前もってどういう内容の話をどういう順序で
するのかぐらいは、メモにしておくぐらいの心構えが必要となる。
もう一つの原因が、普段から手紙や文章を書く訓練ができていないという
ことである。友人やガールフレンドと話をするなら、一○○か二○○のボブ
キャブラリーでも充分話を通じるだろう。しかし、ビジネスの世界では
通用しない。言葉そのものを知らないのに、電話のかけ方はこうだ、
電話がかかってきたときはこうしなさいといってみてもはじまらない。
わが社では、わたしが率先して手紙を書く。社員を褒めるとき、叱るとき、
あるいは電話をすれば一分で済むことでも、わざわざ手紙にすることも
多い。また、現場の各責任者には毎週ファックスでレポートを送らせ、
その返事をせっせと書く。かつては年の三回、昇給時と夏冬のボーナスを
支給するときに、全社員に自筆の手紙を書いて、そのなかで社員を褒め
ちぎった。
スピードばかりが優先される現代であるが、すべてに「ズバリ」が賢明
とはかぎらない。手紙だからこそ深まる人間的な絆もある。
いまわたしは改めて、手紙、文章を書く重要性を社員に訴えていこうと
している。
この続きは、次回に。