「人を動かす人」になれ! ㊸
47.「競争原理」で女性社員の意欲を高める方法
ここまで読み進んで頂いた読者の方は、日本電産は何と男臭いイメージの
会社なんだという印象を持たれたかも知れない。
しかし、わが社の女性社員の比率はほぼ五○パーセントで、本社でも、
営業所でも、工場でも女性の姿の方が目立つ。
男女は平等で、性別に関係なく能力さえあればどんどん登用している。
なかには、自ら名乗りをあげてアメリカの現地法人に営業課長代理として
赴任した女性社員、またフィリピンの工場稼働に伴う社内公募に応募した
女性二人が、生産管理と技術スタッフとしてそれぞれ現地で活躍している。
まだ少数ではあるが、今後は海外で活躍する女性社員ももっと増えて
くると思う。
わが社の女性社員は総じて仕事に対する意欲も高く、上司が放っておくと
夜遅くまで仕事をしている。それが年に数回、どうしても止むを得ない
事情があるときなら仕方がないが、連日ということになると帰宅途中の
心配もあって、頼んで早く帰ってもらうことも日常茶飯時だ。
女性社員の意欲を高める方法はいくつかあるが、その際一番のポイント
になるのは能力差のない人を揃えることである。
一方、男性の場合はあえてそれを考慮しない。つまり、男性社員の場合、
能力ややる気の度合い、学歴などが異なる者同士を同じ職場に配属した
方が、競争原理が働いていい結果の出ることが多い。しかし、女性社員
にはこの原理が当てはまらない。あきらめが早いというのか、最初から
暗黙の順位のようなものがあると、それに甘んじてしまって、お互いの
伸びが止まってしまう傾向がある。
もう一つは、同じ職場の女性社員はすべての面で全員平等にしなければ
ならないということ。褒めるにしても、話しかけるにしても、仕事を頼む
にしても原則は全員平等で、このバランスが崩れると、人間関係が気まずく
なってしまうことが多々ある。だから、能力差のない人を揃えないと
いけないという理屈にもつながっていく。
これを煩わしいと考えていては女性社員は動かせない。
欧米に比べると、わが社も含めて日本の企業は女性社員の戦力化では、
まだまだ未熟である。重要な仕事を与えるという経験そのものが不足
しているし、企業の側にも、上司の側にも、そして働いている女性自身の
なかにも、「女性だから」という意識がまだどこかに残っている。
まず、こうした自らが持っている意識を払拭することが先決だ。任せて、
やりがいを持たせて意欲を引き出すのに、男女の区別はない。
● 赴任
任地におもむくこと。「単身で―する」
● 日常茶飯
日々のありふれたこと。
いつものことで特に取り上げるまでもないもの。
毎日の食事の意から。
● 暗黙
口に出さないで黙っていること。
「―のうちに認める」「―の了解」
● 払拭
はらいぬぐい去ること。すっかり取り除くこと。
一掃。ふっしき。「因習を―する」「保守色を―する」
この続きは、次回に。