お問い合せ

「人を動かす人」になれ! ㊿+2

55.一度叱ったことはすぐ水に流せ

 

永守流の部下を動かす奥義の代表が、相手がちぢみ上がるぐらい徹底的に

叱責し、同時に叱ったアフターケアをきちんとやるということだ。

この叱り方もワンパターンではダメだ。職場の部下や同僚のいる大勢の

前で叱る。叱る本人と上司を呼んで上司だけを叱る。

あるいは、本人一人をホテルのバーや寿司屋のカウンターに誘って、

こんこんといって聞かせることもある。

最近はほとんどやらなくなったが、かつてはわざと公衆の面前、たとえば

京都駅の構内で大声で怒鳴ったり、取引先に連れていって叱ったことも

あった。また、机を思い切り叩くなどは日常茶飯時、花瓶を床に叩きつけて

割ったり、近くにあるものを蹴飛ばして壊すことも珍しいことではなかった。

出来の悪い図面や書類を本人の目の前で破り捨て、「部屋が汚れたので、

きれいにしておいてくれ」と捨て台詞を残して部屋を出ていったことも

数えきれないぐらいあった。もちろん、わざと演技で叱ったのでも、ただ

単に感情に任せて怒りを爆発させたわけでもない。社員一人一人の性格や

個性を見極め、どういう叱り方をすれば彼らの心のなかに眠っている

闘争心や負けん気に火をつけることができるのか。これらを充分に考慮に

入れてのことだ。当然のことだが、叱責されることとをダメな人間だから

叱られるとか、そういった烙印を押されると思っている人間に対して叱ると、

かえって逆効果になる。

したがって、望みがあるから叱る、「何くそ」とやる気を起こしてほしい

から叱る。そして叱られている者ほど優秀で、叱ってもらえないのはまだ

レベルに達していないからだという社内の合意が必要だ。だから、わたしは

日本電産を創業して以来、「上司から叱られない社員は三流以下、一日に

五回叱られてやっと二流、一○回叱られるようになってはじめて一人前の

口を利いてもよろしい」といい続けてきた。

というのは、多少理屈のわかる人間なら、何か問題を起こしたりミスや

失敗をしたときに、上司から一度大きな雷が落ちても、「申し訳ありません

でした」と反省して詫びを入れ、これでチャラになるのであれば、いつ

までもネチネチと咎められるよりも、よほど気持ちがスッキリするはずで

ある。こうしたケジメをつけることによって、済んでしまったことは水に

流す。わたしが、「いくら叱ってもトイレに行けば忘れる」と公言して

いるのはこのためで、このケジメがなければ責任感の強い部下ほど立ち

直るのに時間がかかり、やる気のある部下ならチャレンジ精神までを

失わせてしまう。将来性のある部下をダメにしてしまわないためにも、

上司は毅然たる態度で叱ることが重要である。

 

● 奥義

 

学問・技芸・武芸などの最も奥深い大切な事柄。極意。おくぎ。

「―を極める」

 

● 日常茶飯時

 

ごく平凡なありふれたこと。「茶飯」は、毎日の食事やお茶のこと。

毎日ご飯を食べ、お茶を飲むようにという意から。

日常茶飯事にちじょうさはんじ」などとも使う。

 

● 捨て台詞

 

 立ち去ろうとするとき、相手の返答を求めないで一方的に

言い放つ言葉。捨て言葉。「―を残して去る」「―を吐く」

 

● 烙印を押される

 

ぬぐい去ることのできない汚名を受ける。また、周囲からそういうもの

として決めつけられる。「裏切り者の―◦れる」

 

 

この続きは、次回に。

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