「人を動かす人」になれ! ㊿+20
73.全体の二割を味方につけろ!
現在の日本はリーダー欠如の時代である。政治の世界を見ても、経済界を
見渡しても、強力なリーダーシップを発揮してグイグイと人を引っ張って
いくようなリーダーは皆無だといってもよい。
この結果、新聞各紙のトップを飾るような斬新な技術や商品は生まれて
こないし、ベンチャー企業も育っていない。
企業にも管理者はいても経営者はいないというような状況になっている。
文字通りの閉塞状態で、これから二一世紀の初頭にかけて日本は重大な
危機、困難に陥るであろうことは容易に想像がつく。そして、一度行き
着くところまで行って、「これではいかん」ということになり、本腰を
入れて改革を推進する強力なリーダーが出てくる。
国が存亡の危機に見舞われたときに、英雄があらわれるというのが歴史の
必然で、そうなるにはまだ五年や一○の歳月が必要であろう。
国民としては、そうした英雄が出現してくるのを待ち、この英雄が誤った
方向に向かわないか厳しく監視する以外にない。だが、経営者の立場に
なるとこんな悠長なことをいってはいられない。世の中に蔓延している
不況感に飲み込まれないように、さらには日本社会を覆っている閉塞感
とは一線を画し、たゆまぬ自己改革に取り組んでいくのがリーダーの責務で、
これができなければ生き残っていくことはできない。だが、みんなの頭の
なかでは改革が必要だとわかっていても、実際に着手しようとすると、
強く反対する者も出てくる。この反対を押し切って改革を断行すると反発
する人間も増える。もちろん、全員が反対するような改革では成功は
おぼつかないが、リーダーに先見の明と強い意志があり、二割の社員の
支持があれば改革は成功すると思う。
なぜ二割かというと、人間の視界は三六○度の八割、すなわち三○○度近い
広がりがある。しかし、真後ろの六○度ぐらいはどうしても目の届かない
盲点ができる。二割の支持者にはこの盲点を補う目になってもらうので
ある。そうすれば、少なくとも真後ろからの闇討ちだけは受けることが
ない。
この二割の法則は、管理者としての資質を判断する場合にも応用できる。
たとえば、わが社の課長や部長が部下全員に嫌われているのであれば、
不適格だと認めざるを得ないが、二割の部下の支持や信頼があれば、
わたしは管理者としてギリギリの合格ラインに入っていると思っている。
● 皆無
全く存在しないこと。全然ないこと。また、そのさま。
「欠席者は―である」
● 閉塞状態
しめて通れないようにすること。 また、とじてふさがること。
● 悠長
動作や態度などが落ち着いていて気の長いこと。また、そのさま。
「―に構える」「―な話」
● 蔓延
つる草がのび広がること。病気や悪習などがいっぱいに広がること。
「ペストが―する」
● 閉塞感
閉じふさがっている感じ。また、比喩的に、閉じふさがったように先行きが
見えないさま。「のどに―がある」「―を打開する」
● 一線を画し
違いがはっきりしていること、または、境界線や区別をはっきりさせる
こと。 一線を画する。
● 先見の明
せんけん【先見】 の=明(めい)[=識(しき)] 物事がおこる以前に見抜く
見識。 将来のことを見通すかしこさ。
この続きは、次回に。