ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」⑤
✳️ アクションプランをつくる
エグゼクティブとは行動する者であり、物事をなす者である。
エクゼクティブにとっては、いかなる知識といえども行動に転化しない
かぎり無用の存在である。しかし行動の前には計画しなければならない。
望むべき結果、予想される障害、必要となる修正、チェックポイント、
時間管理上の意味合いを考えなければならない。
第一に、「今後一年半あるいは二年間、自分は何によって貢献すべきか」
「いかなる成果をもたらすべきか」「それはいつまでにか」を考え
なければならない。
第二に、行動への制約条件を考えなければならない。
「倫理的に正しいか」「組織内で理解を得られるか」「法律的に問題
ないか」「組織としてのミッション、価値観、方針に合っているか」を
考えなければならない。
これらの問いへの答えが成果を約束するわけではない。しかしこれらの
制約を無視するならば、いかなる行動といえども、間違ったもの、成果を
期待しえないものになることは間違いない。
アクションプランとは意図であって、絶対の約束ではない。拘束ではない。
一つひとつの成功が新しい機会をもたらし、一つひとつの失敗が新しい
機会をもたらすがゆえに、頻繁に修正していくべきものである。
事業環境、市場、組織内の変化についても同じことがいえる。
それらの変化がアクションプランの修正を求める。
アクションプランなるものはすべて、柔軟性を当然のこととしなければ
ならない。
加えてアクションプランには、成果と期待を照合するためのチェック
ポイントが必要である。成果をあげるには、チェックポイントに二つ
設けることが望ましい。
一つは中間点、例えば九か月後である。もう一つは終わりに近く、次の
アクションプランの策定に入る前である。
アクションプランは時間管理の基準としても必要である。
時間こそ最も稀少で価値のある資源である。
企業、政府機関、NPOのいずれであれ、あらゆる組織に時間を無駄にする
要因である。そのような状況において、時間の使い方の目途となるものが
アクションプランである。ナポレオンはアクションプランどおりに事が
運んで戦いに勝ったことはないといっていた。しかし彼は、あらゆる戦いで
歴史上例のない緻密さでアクションプランをつくっていた。
アクションプランなくしては、すべてが成り行き任せとなる。
途中でアクションプランをチェックすることなくしては、成り行きの中で
意味のあるものとないものとを見分けることすらできなくなる。
● 意図
1. 何かをしようとすること。「早期開催を―する」
2. 何かをしようと考えている事柄。おもわく。
もくろみ。「相手の―をくむ」
● 拘束
思想・行動などの自由を制限すること。「時間に―される」
● アクションプラン
アクションプランとは英語の「action plan」のことで、「行動計画」を
指します。一般的に、企業が事業を行う場合は、事業計画を作成して、
内容を元に担当部門別の事業目標を決定します。そして、各部門では
事業目標を達成するための戦略に沿って、「誰がいつまでに何をどのように
行うか」の行動計画を決めます。これがアクションプランです。
通常、事業目標には中期的な目標を達成するための短期目標が設定される
場合が多く、同様にアクションプランにも、中期的なアクションプランと
短期的なアクションプランがあります。
● 稀少
少なくて珍しいこと。きわめてまれなこと。また、そのさま。
「今時―な存在」
この続きは、次回に。