ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」⑦
□ コミュニケーションを行う
成果をあげるには、アクションプランを理解してもらい、情報ニーズを
理解してもらわなければならない。特にアクションプランについては、
上司、部下、同僚に示し、意見を聞いておかなければならない。
同時に、自分がいかなる情報を必要としているかという情報ニーズに
ついても理解してもらわなければならない。
通常、誰でも部下からの情報には注意を払う。しかし上司や同僚からの
情報についても注意を払わなければならない。
チェスター・バーナードが1938年に著した『経営者の役割』は、組織の
一体性は所有権や命令ではなく情報によってもたらされることを明らかに
した。ところがいまだに、情報とは、経理などの情報のスペシャリストが
扱えばよいとの考えが残っている。その結果、かえって使いもしない膨大な
データを手にしつつ、必要な情報は手にしていないという状況になって
いる。この状況になっている。この状況を打破するには、必要な情報を
明らかにし、求め続けるしかない。
● チェスター・バーナード
チェスター・アーヴィング・バーナード(Chester Irving Barnard、
1886年 – 1961年)は、アメリカ合衆国の電話会社の社長であり、経営
学者である。1927年から約20年間、アメリカのベル電話システム傘下の
ニュージャージー・ベル電話会社社長を務め、その社長在任中の1938年に
主著『経営者の役割』を刊行し、それによって科学的管理法のフレデリック・
テイラーと並び称される経営学者としての名声を確立した。
彼は組織をシステムとして定義し、「意識的に調整された2人またはそれ
以上の人々の活動や諸力のシステム」とした。
これは公式組織の定義であるが、その成立のための条件として組織の
3要素:共通目的(組織目的)・協働意志(貢献意欲)・コミュニケー
ションを示した。
協働のシステムは公式組織が中核となって物的要因・人的要因・社会的
要因が結合したシステムである。組織の3要素の均衡が組織成立の条件で
あり、存続の前提となる。この均衡を内部均衡という。また、人間にも
組織にも、目的達成とそれにともなう満足ということが考えられなければ
ならないが、目的達成の基準は有効性(effectiveness)、満足の基準は能率
(efficiency)と定義される(能率という言葉の使い方は一般的なものとは
異なる)。管理論はこのような組織論の基礎の上に築かれ、道徳の創造と
いうリーダーシップが導き出される。
バーナードの主たる理論的な相貌は主著に明瞭に現れているが、この著作は
ニュージャージー・ベル電話会社の社長時代に、ハーバード大学のロー
ウェル研究所で行った公開講義に部分的拡大と加筆修正を加えて完成させた
ものである。その理論はサイモンやセルズニックらに影響を与えた。
この続きは、次回に。