ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」⑯
今日、企業、政府機関、研究所、病院のうち最も平凡な組織にすら、重要
かつ決定的な意思決定を行なっている人たちがいかに多くいるかという
ことについては、ほとんど認識されていない。知識による権威は地位に
よる権威と同じように、正統かつ必然のものである。彼らの意思決定は、
本質的にトップの意思決定と変わらない。
われわれはすでに、多くの人たちが企業の社長や政府期間の長とまったく
同じ種類の仕事、すなわち企画、組織、調整、動機づけ、成果の測定を
行なっていることを知っている。範囲は限られている。
組織、統合、調整、動機づけ、成果の測定を行なっていることを知って
いる。範囲は限られている。だがその範囲内においてはまぎれてなく
エグゼクティブである。
今日あらゆる階層において、意思決定を行う者は、企業の社長や政府機関の
長と同じ種類の仕事をしている。権限の範囲は限られている。
組織図や電話帳に地位や名前は載っていないかもしれない。
しかし、彼らはエグゼクティブである。そしてトップであろうと新人で
あろうと、エグゼクティブなる者はすべて成果をあげなければならない。
本書の例の多くは、企業、政府機関、軍隊、病院等のトップの仕事や経験を
事例として使っている。だがその主たる理由は、それらの例が容易に知る
ことができ、事実しばしば公表されているからにすぎない。
大きなもののほうが、小さなものよりも分析や理解が容易だからにすぎ
ない。しかし本書は、トップが行なっていることや行うべきことについて
述べた者ではない。知識労働者として自らの組織の業績に貢献すべく行動し、
意思決定を行う責任をもつあらゆる人たちのために書いたものである。
すなわち私がエグゼクティブと名づける人たちすべてのために書いた
ものである。
● 権威
1. 他の者を服従させる威力。「行政の―が失墜する」「親の―を示す」
2. ある分野において優れたものとして信頼されていること。
その分野で、知識や技術が抜きんでて優れていると一般に認められて
いること。また、その人。オーソリティー。
「―ある賞を受賞する」「心臓外科の―」
● 正統
1. 正しい系統・血筋。嫡流。「源氏の―」
2. 創始者の教え・学説・思想などを正しく受け継いでいること。
「保守の―を自認する」
3. その時代、その社会で最も妥当とされる思想や立場。
「戦争中―とされた思想」
● 必然
必ずそうなること。それよりほかになりようのないこと。
また、そのさま。「―の帰結」「なまけたのだから不合格は―だ」
● 権限
1. 国家や公共団体が、法令の規定に基づいて職権を行うことのできる範囲。
2. 代理人や法人の機関が、法律または契約に基づいてなしうる権能の範囲。
3. 個人がその立場でもつ権利・権力の範囲。「君にはその―はない」「―を越える」
この続きは、次回に。