ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㉓
□ 成果を大幅に改善する方法
仕事と成果を大幅に改善する唯一の方法が、成果をあげる能力を向上させる
ことである。もちろん、際立って優れた能力をもつ人を雇うことはできる。
あるいは際立って優れた知識をもつ人を雇うこともできる。
だがいかに努力したとしても、能力と知識の向上に関しては大幅な期待を
することはできない。もはや、これ以上は不可能か、あるいは少なくとも
効果のあまりないような限界に達している。
新種のスーパーマンを育てることはできない。
われわれは現存する人間をもって組織をマネジメントしなければならない。
経営管理者に関する本は、明日の経営者像として万能の人間を描く。
それらによれば、分析においても意思決定においても非凡な才能を持たな
ければならないとされる。同時に、人と協力して働くことに長け、組織や
力関係を熟知し、計数に明るく、芸術的な洞察力や創造的な想像力を
備えていなければならないという。つまるところ、あらゆる分野において
天才的な才能を発揮できる人を求める。だがそのような人はいつの世にも
稀である。
人類の歴史は、いかなる分野においても、豊富にいるのは無能な人のほうで
あることを示している。われわれはせいぜい、一つの分野に優れた能力を
もつ人といえども、他の分野については並みの能力しかもたない。
したがってわれわれは、一つの重要な分野で強みをもつ人が、その強みを
もとに仕事を行えるよう組織をつくることを学ばなければならない。
仕事ぶりの向上は、万能な者をリクルートしたり要求水準を上げたりする
ことによって図れるものではない。それは人間の能力の飛躍ではなく、
仕事の方法の改善によって図らなければならない。
知識についても同じことがいえる。優れた知識をもつ者を手に入れようと
しても、期待できる成果に比べて費用がかかりすぎる。
この続きは、次回に。