ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+29
□ 過去を計画的に廃棄する。
集中のための第一の原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てる
ことである。そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、
「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか」を問うことで
ある。
答えが無条件のイエスでないかぎり、やめるか大幅に縮小すべきである。
もはや生産的でなくなった過去のもののために資源を投じてはならない。
第一級の資源、特に人の強みという稀少な資源を昨日の活動から引き揚げ、
明日の機会に充てなければならない。
誰もが好むと好まざるにかかわらず、過去がもたらした問題に取り組んで
いる。これは避けられないことである。
今日という日は、常に昨日の決定や行動の結果である。
人は、いかなる肩書や地位をもとうとも明日を知ることはできない。
昨日いかに賢明であり、勇気があったとしても、その決定や行動は、
今日になれば問題、混乱、愚かさとなる。
企業、政府機関、その他いかなる組織においても、今日の資源を明日の
ために使われなければならない。前任者や自らが昨日行った意思決定の
後始末のために今日、時間とエネルギーと頭を使わなければならない。
事実、この種の仕事が彼らの時間の半分以上を占める。
したがってそれらのうち、成果を期待できなくなったものを捨てることに
よって過去への奉仕を減らしていかなければならない。
完全な失敗を捨てることは難しくない。自然に消滅する。
ところが昨日の成功は非生産的となったあとも生き続ける。
もう一つそれよりもはるかに危険なものがある。
本来うまくいくべきでありながら、なぜか成果のあがらないまま続けて
いる仕事である。そのような活動は、拙書『創造する経営者』でも説明
したように、『経営者の独善的投資』となり、やがて神聖さまで帯びて
くる。そのような活動は、厳しく排除しなければ組織の血を奪ってしまう。
そしてそのときこの当然の成功をもたらすための不毛な試みに浪費される
のが、最も有能な人たちの能力である。
● 賢明
かしこくて、物事の判断が適切であること。また、そのさま。
「―な処置」「早く報告したほうが―だ」
● 愚か
1. 頭の働きが鈍いさま。考えが足りないさま。
「彼の言葉を―にも信じてしまう」
2. ばかげているさま。「戦争など―なことだ」
3. 未熟なさま。
「この芸に―なるを見て」〈徒然・一九三〉
● 拙書
自分が著した本をへりくだって言う表現。「拙著」の方がより一般的な
表現。
この続きは、次回に。