ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+35
ヴィクトリア朝時代の小説は別として、二一歳で結ばれかけてその後
別の人と結婚し、ともに連れ合いに先立たれて三八歳でめぐり合い、
そして結ばれても、結婚生活はあまりうまくはいかない。
二一歳のときに結ばれていたならばともに成長したであろう。
しかし一七年の間には、互いに変化し、成長し、それぞれの生き方を
身につけている。
若い頃医者になりたかったが実業の道に進まざるをえなかった人が、
五○歳になってあこがれの医学部に入っても、医者としての成功はおろか
卒業も難しい。医療奉仕団に入りたいなどという強い宗教的な動機が
あれば卒業できるかもしれない。さもなければ医学部の暗記的な勉強に
耐えられないほど飽き飽きし、医者の仕事そのものさえ単調で退屈と
感じる。
六、七年前には似合いだった合併も、一方の社長が他方の社長の下に
つくことを拒んで延期されれば、その頭の固い社長が引退したあとでは、
もはやぴったりの縁組みではない。
延期は断念であるというこの事実が、何事であれ劣後順位を付けて延期
することを尻込みさせる。最優先の仕事ではないことは知っていても、
劣後順位を付けることはあまりに危険であると思ってしまう。
捨てたものが競争相手に成功をもたらすかもしれない。政治家や官僚が
重視しないことに決めた政策問題が、やがて最も激しく危険に政治問題に
発展しないという保証はない。
アイゼンハワーやケネディは、公民権問題に高い優先順位を与えようと
しなかった。ジョンソンは政権についたとき、ベトナム問題に劣後順位を
与えた。
● ヴィクトリア朝
ヴィクトリア朝(ヴィクトリアちょう、英語: Victorian era)は、ヴィ
クトリア女王がイギリスを統治していた1837年から1901年の期間を指す。
この時代はイギリス史において産業革命による経済の発展が成熟に達した
イギリス帝国の絶頂期であるとみなされている。
なお、ここで用いる「朝」は「時代(ある一人の君主が統治していた
期間)」の意味であり、「王朝(ある一定の血統に属する君主たちが
統治していた期間)」を指し示すものではない。
この続きは、次回に。