ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+38
P.F. Drucker Eternal Collection 1
The Effective Executive
Chapter:6
第6章❖意思決定とは何か
□ エグゼクティブ特有の仕事
意思決定はエグゼクティブの仕事の一つにすぎない。
通常、時間もわずかしかとらない。しかし意思決定はエグゼクティブに
特有の仕事である。成果を上げるエグゼクティブを論ずるにあたって、
意思決定は特別の扱いを受けるに値する。
地位のゆえか知識のゆえかは別として、組織や組織の業績に対して重大な
影響を及ぼすような意思決定を行うことを期待されている者こそエグゼク
ティブである。エグゼクティブは成果をあげるために意思決定を行う。
エグゼクティブたる者は、いくつかの明確な要素と手順から構成される
体系的なプロセスとして、それらの意思決定を行わなければならない。
しかしそのプロセスは経営書の多くが教えているものとは大きく違う。
成果をあげるには意思決定の数を多くしてはならない。
重要な意思決定に集中しなければならない。
個々の問題ではなく根本的なことについて考えなければならない。
問題の根本をよく理解して決定しなければならない。
不変のものを見なければならない。
したがって、決定の早さを重視してはならない。
あまりに多くを操ることはかえって思考の不十分さを表す。
何についての決定であり何を満足させるかを知る必要がある。
形にこだわることなく、インパクトを求めなければならない。
賢くあろうとせず、健全であろうとしなければならない。
基本を理解して決定すべきものと、個々の事情に基づいて決定すべき
ものとを峻別しなければならない。最も誤りやすい決定は、間違った
妥協である。正しい妥協とそうでない妥協の見分け方を知らなければ
ならない。
決定のプロセスで最も時間がかかるのは、決定そのものではなく決定を
実施に移す段階である。決定は実務レベルに下さないかぎり決定とは
いえず、よき意図にすぎない。このことは、決定そのものが基本の理解に
関わるものであるのに対し、その実施は可能なかぎり実務レベルに近い
ところに位置づけなければならないことを意味する。
● 峻別
厳しくはっきりと区別すること。また、その区別。「公私を―する」
この続きは、次回に。