一九六六年、アメリカの自動車業界が突如自動車の安全性について攻撃

されるようになった原因、およびそれが不意だった原因もここにあった。

安全性の問題に注意を払わなかったという非難は間違っていた。

注意を払わないどころか、道路の安全性や運転の教育には非常な力を

入れていた。

事故の多くは安全でない道路や完全でない運転によって引き起こされて

いた。安全性を考慮した道路では事故は少なかった。

完全教育を受けた運転者は事故が少なかった。

しかし、事故率は減少しているにもかかわらず事故件数は増え、事故の

規模は大きくなっていた。したがって、交通法規や完全教育にもかかわ

らず起こる事故についても何かしなければならないことは明らかだった。

言い換えれば、道路の安全性確保や安全運動の展開とともに、事故の

危険性を減少させるための自動車設計が必要だった。

正しく運転すれば安全であるように設計していたものを、正しく運転

しなくとも安全であるように設計しなければならなくなっていた。

自動車業界はこのことに気づいていなかった。

この例は、不十分な理解が間違った理解よりも危険となりうることを

示している。自動車メーカーだけでなく、州のハイウェー当局や自動車

クラブ、保険会社など安全運動の関係者はみな、事故そのものを認める

ことは危険な運転を奨励しないまでも認知することになると感じていた。

それはちょうど私の祖母の年代が、性病を治療する医師は不道徳を助言

すると考えていたのに似ていた。

不完全性の認知を危険視することはあらゆる人に共通する性癖である。

したがって常に、問題は一般的であるという前提に立たなければならない。

注意を引く問題は、実際は症状の一つにすぎないと考えなければならない。

注意を引く問題は、実際の一つにすぎないと考えなければならない。

そして本当の問題を探さなければならない。

症状だけの手当てで満足してはならない。

そして、もし万一問題が本当に特殊なものであることが明らかになった

場合でさえ、それが新しい基本的な問題の前触れではないか、そしてその

特殊に見える問題もやがては一般的な問題の第一号になるのではないかと

疑わなければならない。

これらのことが、問題を高いレベルで解決しようとしなければならない

理由である。これからの数年間、最も高く最も簡単に売れる証券を発行

することによって当面の資金上の問題を解決しようとしてはならない。

そして、たとえばまだ存在していなくとも、やがてくる大衆資本市場に

適した証券を考え出さなければならない。

また、力はあるが規律のない事業部の族長たちを互いに協力させるには、

手に負えない者を辞めさせ、ほかの者は買収するなどという手を使っては

ならない。そうではなく、組織構造のための新しい理念を考え出すことが

必要なのである。

さらにまた、自らの企業が独占体たらざるをえない場合には、社会主義を

攻撃することで満足してはならない。競争によってチェックされることの

ない無責任な民間の独占企業になることのないよう、そして同じように

無責任であってしかも抑制のまったく不可能な政府の独占体にもなって

しまうことのないよう、第三の道として公的な規制機関を育てていかな

ければならない。

● 奨励

ある事柄を、よいこととして、それをするように人に強く勧めること。

「貯蓄を―する」

● 性癖

性質上のかたより。くせ。「大言壮語する―がある」

[補説]「性」を性１でなく性２ととらえ、性嗜好などの意で用いることが

ある。

● 独占

1. 自分ひとりだけのものにすること。ひとりじめ。「人気を―する」

2. 特定の資本が他の競争者を排除し、生産と市場を支配している状態。

この続きは、次回に。