P・F・ドラッカー「創造する経営者」㉔
いかなる種類の作業がコストの計算に適切であるかを決定することこそ、
事業についての分析の一部である。この決定自体が、事業そのものの
経済的な特質を理解するうえでの大きな一歩となる。
しかもそれは、高度のリスクを伴う純粋に事業上の意思決定である。
分析によって、選択肢とそのそれぞれの帰結を示すことはできる。
しかしそれらの選択肢のうち、いずれを選ぶかという最終の意思決定は
マネジメントの責任である。
作業量によるコストの分析がいかに重要であるかは、一九六三年にニュー
ヨークの経営コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーが、
アメリカ最大の加工食品メーカー、ゼネラル・フーズのために行った食品店の
利益とコストの平均値を差し引いて利益を計算している。
したがって利幅の最も大きな商品が最も利益をあげていると考える。
しかし管理の良いスーパーのチェーンは、これに加えて商品の回転率を
考慮に入れている。
しかし、マッキンゼーの分析は、コストがそれぞれの商品に要する作業量に
よって異なり、品目ごとのコスト負担には大きな差のあることを明らかに
した。
例えばシリアル一箱の利幅と缶入りスープ一箱の利幅とは、一・二六ドルと
一・二一ドルでほとんど同じだった。したがって食品店は、これらの二つの
食品がほとんど同じ利益をあげていると考えていた。
しかし作業量による分析の結果、シリアル一箱の純利益は二六セント、
缶入りスープは七一セントであることがわかった。
さらに、ベビーフードの利益についても作業量による分析を行ったところ、
利幅が大きく回転率が高かったにもかかわらず、あまりにも手間がかかる
ため、実際には赤字になっていることがわかった。
この続きは、次回に。