P・F・ドラッカー「創造する経営者」㉕
これまでマネジメントは事業を作業のシステムとしては考えてこなかった。
しかし、ひとたびこの考え方をとるならば、特に、理論としてではなく
具体例によって理解するならば、その自らの事業への適用は容易である。
そしていかに行動すべきかも直ちにわかるはずである。
しかも、コストの客観基準としていかなる作業量を選択すべきかについて
意見の違いが出てくるならば、それもまた問題の所在を明らかにしてくれる
ことになる。もちろん、コストの単位として使うことのできる作業の種類が
いくつもあることがある。
私の知っているある大手化学品メーカーでは、送り状の数、アフター
サービスのための訪問回数、製品の手直しのいずれもが、作業量の代表的な
単位、コストの真の尺度となりえた。もし違う尺度を採用したために
製品コストの計算が違ってくるならば、それはそれで重要な情報である。
少なくともそのような情報は、その製品の特性を巡って、なぜそれまで
意見の対立が存在したかを明らかにしてくれる。
作業がいくつかの大きな単位としてまとまっている事業については、
それらの作業のコストをそのまま計上すべきである。
各作業のコストを合計すれば、それがそのままの企業のコストとして使える。
これは一つの作業のコストが大きくしかも一定している場合である。
一隻の船の一部を運航させることはできない。
満載であるか否かにかかわらず、船全体を運行させるためのコストが
発生する。
同じように、パルブ工場は稼働するか否かであって、半分の速度で稼働
することはできない。しかも操業のためのコストは一定しており、パルプを
生産するかぎり、全額しかも高額のコストが発生する。
● 客観的
特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま。
「―な意見」「―に描写する」⇔主観的。
この続きは、次回に。