P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-1
□ コストポイントを特定する
コストポイントとは、コストセンターの中でも、特にコストの大半を発生
させている活動である。ここでも、コストの大半を発生させているものは
いくつかの数少ない活動である。当然のことながら、重要なコストポイント
とは既述の分析においてコスト計算の基礎とした作業量(第3章参照)の
大きな部分を発生させている活動のことである。
コストセンターおよびコストポイントの例は、表7のとおりである。
例えば表7の分析結果のうち、予想されていたとおりのものは、次の四つで
あろう。
表7|ユニバーサル・プロダクツ社のコストセンターとコストポイント
コストセンター コストポイント コストセンターの 最終価格に
内での割合 占める割合
1 輸送費
(1) 工場内、工場間の輸送 5% 2.5%
(2) 工場と工場外との輸送 26 4
(3) 倉庫内、搬出入の荷造り 24 4
(4) 包装および荷造り 20 3
2 営業費(メーカー、卸・小売企業)
(5)営業活動 62 5
(6) 販売促進活動 25 2
3 資金費
(7) 完成品在庫(倉庫内) 23 3
(8) 売掛金 20 2.5
(9) 金利 9 1
4 資金費(卸・小売企業)
(10) 在庫 25 1.5
5 材料費
(11) 材料A 20 5
(12) 材料B 20 5
(13) 包装資材 20 5
6 管理費
(14) 受注事務 33 3
(15) 信用調査および代金請求
20 2
計 48.5
※ 数百種に及ぶ活動のうちわずか15種類の活動で、最終消費者の
支出の約50%を占める。
(4) 包装および荷造り 三%(最終価格に占める割合。以下同)
(7) 完成品在庫 三%
(11) 材料A 五%
(12) 材料B 五%
しかし、その他のコストポイントは予想もできなかったものであって、
特に次の六つは予想したものよりもはるかに大きかったはずである。
(3) 倉庫内、搬出入の荷扱い 四%
(8) 売掛金 二・五%
(10) 在庫 一・五%
(13) 包装資材 五%
(14) 受注事務 三%
(15) 信用調査および代金請求 二%
他方、(6) 販売促進活動はもっとかかっているものと思われていた。
卸売業者や小売業者も販促活動を行ってくれているものと考えていた
ためである。
そして(8) 売掛金については、もちろん数字は把握していたものの、分析の
結果、卸売業者と小売業者の在庫状況からして、自社製品の流通の資金
繰りをしていただけでなく、無利子でそれら流通業者の資金繰りの面倒
まで見ていたのではないかとの疑念が強まった。
また、(14) 受注事務と、(15) 信用調査および代金請求のコストの大きさは、
ユニバーサル・プロダクツ社の流通システムそのものに基本的な間違いが
あることを示していた。
さらに、(13) 包装資材は、大きなショックだったはずである。
それはまったく無視していたコストだった。あらゆる原材料を購買部門が
購入していたにもかかわらず、包装資材だけはマーケティング部門の包装
デザイナーに任せていた。しかも包装デザイナーたちは包装資材のコストに
無関心だっただけでなく、輸送、積み込み、保管のコストと包装の関係に
ついても無関心だった。
したがってユニバーサル・プロダクツ社では、これらの分析結果から
いくつかの重要な分野で直ちに行動をとることにした。
この続きは、次回に。