P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-5
(1) 生産的コスト
生産的コストの分析において問うべきは、「何が最も大きな成果をあげるか、
いかにして最小の活動とコストで最大の成果をあげるか」である。
したがって、生産的コストに対しては前章の増分分析の考え方を適用する
ことが有効である。というのは、生産的コストはその成果が急減する時点まで
追加していくべきだからである。
ということは、生産的コストはコストとして管理してはならないことを
意味する。生産的コストは機会に資源を集中することによって管理しな
ければならない。必要なのは、コスト管理ではなく成果管理である。
したがって、生産的コストは、常に資源の生産性によって評価しなければ
ならない。人、時間、資金という三つの主要資源によって得られる成果に
よって評価しなければならない。
すでに述べた成果をもたらす領域についての分析や、資源配分についての
分析に加えて、コスト管理が明らかにするものは生産性の評価である。
すなわち、肉体労働者の生産性に関しては給与一ドル当たりの産出高と
利益、時間の生産性に関しては労働時間および設備の稼働時間当たりの
産出高と利益、資金の生産性に関しては全投入資金一ドル当たりの産出高と
利益である。
したがって、機会に資源を集中することこそ、生産的コストの管理のための
唯一の効果的な方法である。
(2) 補助的コスト
補助的コストについては、まず、それらが必要かどうかを明らかにしな
ければならない。したがって、「この仕事をやめたならば、どれだけの
損失を受けるか」を問わなければならない。
もし答えが、「最小限に切り詰めた場合の補助的コスト以下」であるならば、
時折の損失を覚悟してそのような活動はやめてしまうべきである。
一ドルを得るために九九セントを超えるコストをかけてはならない。
特に一ドルの利益が可能性にすぎない場合には、たとえその可能性が
大きくとも、九九セントのコストはあまりに大きすぎる。
補助的コストの管理の悪い例は、ユニバーサル・プロダクツ社の流通費に
見ることができる。同社は、小売業者の下位三○○○社に対しては前金に
よる注文制をとることによってコストを大幅に削減した。
しかし、それでもなお可能な利益よりも多くのコストがかかっている。
小口の小売業者は前金による注文制でも間尺に合わない。
そのような顧客の維持に必要なコストは、利益を上回っている。それらの
小売業者はすべて切り捨てても、さして売上げは減らない。
しかも、大口の小売業者からの注文増によって、当初の若干の売上げ減も
急速に補われるに違いない。
もしどうしても補助的コストを切り捨てられなければ、「最小限必要な
活動とコストはどの程度か」を問わなければならない。しかし補助的な
コストに関するこの最小限原則は、常に企業活動の再設計を必然のものと
する。
この続きは、次回に。